2024年12月25日( 水 )

「マイナス金利政策」を導入する日銀の賭け(前)

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 日銀が「マイナス金利」の導入を決定

kabuka_img 1月29日に日銀がマイナス金利政策の導入を決定したが、この決定を受けて同日の日経平均株価(終値)は、前日比+476円85銭の1万7,518円30銭と急上昇した。きょう2月1日も前日比+346円93銭の1万7,699円60銭で終わっており、1万8,000円台に迫る勢いを見せている。

 2016年は、年明けから中国経済の低迷や原油安によって円高が進行。東京株式市場における日経平均株価(終値)は、昨年末の12月30日の大納会では1万9,033円71銭だったが、1月18日にはついに1万7,000円を割り、1万6,955円57銭で取引を終わった。その後は1万7,000円を挟む攻防が続き、金融市場では政府・日銀の「新たな金融緩和策」に期待する声が高まっていた。

 黒田日銀総裁は、スイス・ダボスで1月20~23日に開かれた世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)の出席を前に、日銀スタッフに対し「帰国するまでに追加緩和するオプションを考えてくれ」と指示していたという。24日に帰国した黒田総裁に対しスタッフが用意していたのは、市場がサプライズする奇策の「マイナス金利政策」だったのだ。

 日銀は1月28と29日に金融政策決定会合を開催。13年4月に導入した量的・質的金融緩和(異次元緩和)に加えて、最終日の29日、黒田総裁が政策委員会に初めて「マイナス金利政策」を提案。14年10月の追加金融緩和の決定時と同じく、賛成5、反対4のきわどい採決となったが、賛成多数で導入が決まった。今月16日から実施される。

賛成5名

 賛成したのは、黒田総裁と岩田・中曾副総裁の3名に、経済企画庁OBの原田委員と、元トヨタ自動車副社長の布野委員の5名。このなかで、過去に日銀に対して批判的な論客だった岩田委員が、執行部の一員として賛成に回っている点が注目される。

反対4名

 反対したのは、いずれも民間出身の白井、佐藤、木内、石田委員の4名。
反対に回った白井委員は、今年3月31日に、石田委員は6月29日に5年の任期を迎えて退任するが、いずれも当時民主党政権下の第二次菅内閣の任命によるものだった。この2人の後任人事ついては、安倍総理の意向が働くものと見られる。
 ちなみに第二次野田内閣が任命した佐藤委員、木内委員も来年7月23日に任期を迎えることになっており、今後は今回のような薄氷を踏むような採決にはならないものと思われる(表参照)。

政策委員会について

 政策委員会は、通貨および金融の調節に関する方針の決定や、業務執行の基本方針を定め、役員の職務執行を監督する権限なども有している、日本銀行の最高意思決定機関である。委員会は、総裁、副総裁(2名)、審議委員(6名)の計9名の委員で構成。総裁および副総裁を含む委員は、衆参両院の同意を経て内閣が任命する国会の同意人事となっており、任期は5年。審議委員は常勤で、年収は2,638万円と厚遇で迎えられている。

(つづく)
【北山 譲】

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