県政のドン・蔵内勇夫の「栄枯盛衰物語」(3)正副議長就任時の金銭授受疑惑 問題点を再チェック
議長1,000万円、副議長500万円
福岡県議会ではいま、「正副議長の就任にかかわる金銭授受疑惑」が浮上しています。金銭授受とは、議長・副議長に就任しようとする議員が、就任に先立って自民党県議団の幹部(蔵内勇夫氏ら)に現金を渡していたというもの。金額は議長が1,000万円、副議長が500万円だったなどとされています。
2020年6月から1年間、議会議長を務めた吉松源昭県議会議員が告発したのを発端に、26年9月17日に第三者委員会が正式発足。10月17日には地方自治法第100条に基づく百条委員会の設置が決定され、調査されることとなっています。
第三者委員会は弁護士5人で構成し、調査担当弁護士8人を加えた計13人体制となっており、その費用は1億円以上。もちろん、県民から徴収された税金で賄われます。なお百条委員会は、第三者委員会とは異なり、関係者に出頭や証言、記録の提出を求める権限をもち、正当な理由なく証言を拒否した場合などには、罰則が科されることもあります。
あくまでこの問題は「疑惑」ですが、そもそもなぜ問題なのでしょうか。今回は改めてその点について確認したいと思います。問題点について、以下の5つがあげられそうです。
① 議会人事の公正性が損なわれる
本来、議長や副議長は、議員としての経験や議会運営能力、各会派との調整などの能力を踏まえて選ばれるべき役職。しかし、金銭を支払うことが就任の条件になっていたのであれば、議会人事が能力ではなく金銭によって左右されていた可能性があります。これは、議員間の民主的な選出という仕組みの根幹にもかかわります。
② 議会内の権力構造が不透明になる
今回、金銭を要求したとされているのは、議会で大きな勢力を持つ自民党県議団、そのなかでも蔵内氏をはじめとする幹部ら。仮に、会派幹部が正副議長の就任を左右する立場を利用して金銭を要求していたのであれば、議会内の権力が一部の幹部に集中し、議員の自由な活動や人事の公正性が損なわれていたことになります。
③ 公職に関する金銭授受として、法的問題に発展する可能性がある
ここでいう「法的問題」として、まず考えられるのは刑法上の贈収賄罪に該当する可能性です。今回のような地方議会の議長選出をめぐる金銭授受は、単なる政治倫理上の問題にとどまらず、過去にも刑法上の贈賄罪が問われた事例があります。
④ 政治資金や使途の透明性が問われる
1,000万円、500万円という金額が動いていたとすれば、その資金の出どころや使途も重要な調査対象となります。資金の流れが明らかにならなければ、政治資金の透明性という観点からも疑問が残ります。
⑤ 県民の議会に対する信頼を損なう
県議会は、県民の代表である議員が県政をチェックし、条例や予算などを審議する機関です。その議会のトップを決める過程で金銭がやり取りされていたとなれば、議会が本来はたすべき役割に対する県民の信頼が揺らぎます。
庶民感覚とは大きく乖離
今回の問題は、単に過去の議会人事の不透明さにとどまらず、福岡県議会の運営や政治倫理の在り方が問われていることから、しっかりと調査し、真相を明らかにする必要があるのです。
福岡県の自民党幹部に渡されたお金の使い道は、ゴルフや飲食の費用だったと言われていますが、それは本当だったのでしょうか。数々の疑問を明らかにしてほしいものです。そもそも、政治をするのにゴルフや飲食をすることが、必ずしも必要なのでしょうか。
庶民(有権者)や企業では、何に支出するにせよ、レシートや領収書を残すことで、家族や上司にお金の使途を詳しく伝えることが求められます。県政に関わる予算、かかった費用は税金にかかわることで、それをチェックする立場にある議員が、お金の透明性について明らかにできないことは、その職責上、本来はあってはならないことです。
ところで、筆者はそもそも論として、わからないことがありました。それは大きく2つ。1つ目は正副議長になることに、1,000万円、500万円もの価値があるのかということ。もう1つは、公職である県議会議員である人たちが、こうした慣例に疑問をもたなかったのか、ということです。
実は、この2つの疑問を含め、これまでに県議会はもちろん、福岡県内の自治体の議員など複数の人たちに話を聞いています。次回は、そのなかから証言をご紹介したいと思います。そこから、福岡県議会をはじめとする政治の世界、さらには有権者にとっても考えるべきおかしな実態が見えてきます。
(つづく)
【三輪尚樹】
<プロフィール>
三輪尚樹(みわ・ひさき)
50代半ば。福岡市在住。マスコミ関連の仕事を長くしてきましたが、政治関連の取材・執筆の経験はほとんどありません。学生時代から30年以上、関東に居住していたため、福岡県の政治情報についてもほぼノータッチで生きてきました。政治不信。いわゆる「ノンポリ」で支持政党はありません。









