BIMデータで建築確認 29年春の開始に向け段階整備

 建築確認・検査が大きく変わろうとしている。国土交通省は9月、3次元(3D)の建築モデルデータを建築確認に直接活用する「BIMデータ審査」の導入に向けた基本構想を公表した。2029年春の本格導入を目指し、従来の2次元(2D)図面による審査から、デジタルデータやAIを活用した効率的な審査体制へと転換を図る。デジタル化により、都市のデジタルツイン化など建築確認データの新たな活用も期待されている。

4月からBIM図面審査

 国土交通省は、データ審査の実施に向けた基本方針や関係者の役割分担などを示す「建築確認・検査におけるBIMデータ審査の導入に関する基本構想」を公表した。

 まず2026年4月から導入された「BIM図面審査」では、BIMから2D図面であるPDFファイルを出力し、それを審査の正本としている。国際的な標準規格であるIFCデータの提出も求められているが、審査対象ではなく、図面ではわかりにくい建物形状を3Dで理解するなど、審査者の理解を促すための参考という位置付けだ。これに対し「BIMデータ審査」では、形状情報に加えて部屋の名称、部材の仕様、性能などの属性情報をもつIFCデータをそのまま審査対象とする、新たな仕組みとなる。

 「BIMデータ審査」では、IFC形式などのデータを「共通データ環境(CDE)」と呼ばれるネットワーク上で共有し、審査を行う。基本構想で示された審査方法は、大きく分けて2つある。

 1つは、審査方法の基本となる「ビュー審査」だ。確認申請用のCDE上で、IFCデータに含まれる形状情報や属性情報を、審査事項に適したかたちで表示して、審査者が視覚的に確認する。完了検査時にも同一のデータを利用するため、検査段階での図面提出が不要となる。

 もう1つは、IFCデータの情報をプログラムで処理し、その結果を利用する「デジタル審査」だ。AIによる審査補助も、この仕組みに含まれる。防火区画の適合性判定や面積計算、高さ制限の確認などを自動化・補助化することで、手作業による見落としを防ぎ、審査の迅速化と高品質化を両立させる狙いがある。

BIM図面審査とBIMデータ審査(出所=国土交通省「BIM図面審査 制度説明動画」資料)
BIM図面審査とBIMデータ審査
(出所=国土交通省「BIM図面審査 制度説明動画」資料)

審査対象は段階的に拡大

 「BIMデータ審査」では、BIMデータを構成する情報を一定のルールに基づいて整備する必要がある。IFCデータは大きく「形状情報」と「属性情報」に分けられる。

 形状情報については、建築物の寸法、位置、形状、面積など、審査に必要となる最低限の情報を求める。一方、属性情報については、性能、仕様、材質など、審査事項に対応した情報を入力することを想定している。これらを「IFCデータ作成基準」として整理する。

 29年春の開始時点では、すべての確認審査項目をBIMデータ審査の対象とするのではなく、設計者側の入力負担と、2D図書の作成負担の軽減、審査者側の効率化などを踏まえて、対象項目を選定する。開始後も、検討が進んでBIMデータによる審査が可能となった項目から、順次追加する方針だ。

 また基本構想では、29年春の開始時から規模、用途、構造を問わず、すべての建築物を対象とすることを目指すとしている。

 26年度末までに、制度開始時の対象とする審査項目については、審査・検査方法を確定する予定。その後も優先順位を付けて、対象項目の検討を進める。また、制度開始には関係法令の整備も必要となる。建築基準法施行規則や告示などの改正を検討するほか、構造計算適合性判定、建築物エネルギー消費性能適合性判定、消防同意など、建築確認と関連する行政手続への適用についても、検討を進める。

 国交省は今後、ワーキンググループでの検討を進め、詳細なガイドラインなどを順次公開していく方針だ。

(出所=国土交通省「建築確認・検査におけるBIMデータ審査の導入に関する基本構想」概要)
(出所=国土交通省
「建築確認・検査におけるBIMデータ審査の導入に関する基本構想」概要)

中小もBIM必須に

 基本構想では、建築主、設計者、審査機関のそれぞれに、「BIMデータ審査」の導入による業務上のメリットを想定している。

 まず、設計者・監理者にとっては、整合性のとれたデータで申請を行うため、異なる図面間の矛盾を修正する膨大な作業が削減される。事前に法適合性をセルフチェックするツール(プレチェック)の利用も可能になり、審査段階での不適合による手戻りが大幅に減少する。

 審査・検査機関においては、記載漏れや表現のバラつきが抑えられた標準的なデータで確認できるため、整合作業の負担が軽くなり、確認交付までの期間短縮につながる。建築主にとっても、事業全体のスケジュール遅延を防げる利点がある。

 さらに社会的な意義として、標準化されたBIMデータが蓄積・流通することで、建築物の施工や維持管理、さらには3D都市モデル(PLATEAUなど)との連携といった、建築物のライフサイクル全般でのデータ利活用が進むと期待されている。

 これらを実現するためには、中小の設計事務所や建設業者においても、BIMの活用促進が不可欠となる。建築確認申請は以前から電子化されており、その割合は年々増加。国土交通省によれば、24年度第1四半期で約55.5%に達している。

 構造設計事務所での勤務経験がある一級建築士によれば、「BIMデータ審査」が実施されれば、中小設計事務所でもBIM導入が必須になるとみている。

(国土交通省「建築確認・検査におけるBIMデータ審査の導入に関する基本構想」別添「BIMデータ審査の開始に向けた工程表」から作成)
(国土交通省「建築確認・検査におけるBIMデータ審査の導入に関する基本構想」別添「BIMデータ審査の開始に向けた工程表」から作成)

<プロフィール>
桑島良紀
(くわじま・よしのり)
1967年生まれ。早稲田大学卒業後、大和証券入社。退職後、コンビニエンスストア専門紙記者、転職情報誌「type」編集部を経て、約25年間、住宅・不動産の専門紙に勤務。戸建住宅専門紙「住宅産業新聞」編集長、「住宅新報」執行役員編集長を歴任し2024年に退職。明海大学不動産学研究科博士課程に在籍中、工学修士(東京大学)。

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