県政のドン・蔵内勇夫の「栄枯盛衰物語」(4)福岡県議会議員に直撃

「議長」という役職

 福岡県議会で今、浮上している疑惑の1つに正副議長の就任にあたり金銭の授受があったのではないかということがあります。前回は、それがなぜ問題なのかということを中心に、改めて解説しました。今回は、現職の福岡県議会議員Aにこれらの疑問について直撃しましたので、その内容についてご紹介します。

 Aは蔵内氏の地元である福岡県南部地域の選出で、自民党県議団に所属しています。議長も経験していますから、今回の疑惑に関しても当事者の1人となり得る立場です。

 そもそも、議長という役職はどんなものなのでしょうか。Aは「名誉職ではありますが、決して楽な立場ではありません。知事とともに県内外の行事に出席し、県議会を代表して、各種団体や関係者の前で挨拶したり、国や関係機関との調整に関わる。議長のスケジュールは朝から詰まっており、次々と行事をこなすため、ほぼ一日中拘束されていた」とのことです。

 その結果、地元の行事に出席する時間が減るという問題もあり、地元の支持者から「議長になった途端に地元に顔を出さなくなった」といわれるケースもあるといいます。

 別の議会関係者(市議会議員を含む)からは、「4期目(16年間)を迎えるころになると、地元の支援者から『そろそろ議長に…』と、就任を求められるようになり、だから議長になりたい気持ちがあった」という話を聞いていました。

 なったらなったで支持者からさまざまな指摘をされるのが、議長という役職でもあるようです。いずれにせよ、議長職には名誉やステータスがあり、議員生活の1つの到達点と考える議員が一定数いるということです。

 Aには、議長になるための条件についても話してもらいました。ポイントは以下のような内容です。

  • 自分がなりたいからなれるものではなく、同期や周囲の議員からの支持が必要になる
  • 議長になる機会を得られないまま議員生活を終える人もいる
  • だからこそ、チャンスがあれば一度は議長席に座りたいという思いが生まれる
  • 議長になりたいという希望を持つ議員が複数いれば、同期や会派内での調整が必要になる

歯切れの悪い回答

 さて、そもそも福岡県議会の金銭授受疑惑とはどんなものなのでしょうか。幾人か告発者がいますが、その1人である吉松源昭議員(2020年6月から約1年間、議長を務めた)は、議長就任前に、当時の自民党県議団幹部(蔵内勇夫氏ら)から、議員らとのゴルフ代や飲食費などの名目で約2,000万円を要求され、渡したと証言しています。

 Aは自身の就任時に、同期の議員同士で事前に話をまとめ、会派の会長に「お願いします」と推薦に行くのが通例だったと説明しています。結局のところ、本人の説明では、就任は同期議員間の合意や会派内の調整によって決まるものであり、金銭を渡すことがマストだったとは述べていません。

 たとえば、ゴルフについては「自分はゴルフ好きではなく参加したくはなかったが…」と前置きしたうえで、冬の寒いなかに参加したとは述べています。ただ、その費用を自分が負担した、つまり県議団幹部に高額な代金を渡したとは述べていません。

 また、Aは「吉松氏を含むすべての告発者やその関係者は、『金銭の名目は、議長・副議長への就任料とは説明されていなかった』ようだ」と指摘。当時の県議団幹部らは金銭授受の名目を、議長・副議長の就任ではなく、あくまでも同期や会派の調整のための費用だとしていたのではないかという旨を述べています。

 ここまで読んでいただいてお感じになると思いますが、Aの説明は終始、非常に歯切れが悪い印象でした。おそらく暗にAは仮に金銭授受をしていたとして、県議団幹部らと同じような認識であったと言いたいのだと思われました。

 金銭の授受について肯定も否定もしていません。蔵内氏と同様に県南地域を地盤とするAにとって、現在の状況は暴風雨級の逆風でしょうし、そのため、そのことは理解できました。「今は、地元の関係者への説明に追われている」とのことでした。

利用された「おらが街の先生」

 ところで、前回の記事の最後に筆者個人の疑問として、告発されているように、「正副議長への就任をめぐって1,000万円、500万円もの金銭が動くとすれば、それほどの価値があるのか」「公職である県議会議員が、こうした慣例に疑問をもたなかったのか」、ということを記しました。

 Aにもこれらの疑問について質問を投げかけましたが、1つ目の疑問については、前述のような内容。正副議長就任の価値が上記の金額に換算できるかはわかりませんでしたが、Aにも議員生活の到達点としての魅力は確実にあったのだと思われます。

 第三者委員会や百条委員会が、正副議長就任をめぐる金銭のやりとりについて、どのような事実関係を認定するのかは定かではありません。仮に金銭授受が事実であれば、収賄罪などの刑事責任が問われる可能性もありますが、その判断は最終的には司法に委ねられることになります。

 いずれにせよ、自民党県議団幹部がこれを議会の慣習的なものとしていたのは、議員の名誉欲などを利用した巧みな集金術のように感じられます。

 また、「おらが街から選出された先生を議長・副議長に」という地元有権者の心情を利用したものだとも思われます。議員の評価は当選回数ではなく、どのような政策を実現したのかによるもの。地元支持者にとっては利権などの絡みがあり、議員に議長職就任を期待するような雰囲気がありますが、今回の一連の事態を受けて、このような政治や議員との付き合い方を今一度、考える時期にきていると考えます。

 Aには「ワンヘルス」についても話を聞きました。その回答は2つ目の筆者の疑問について、少なくとも1つ目よりは明確に答えてくれており、そこに福岡県議会の問題が凝縮されているように感じられます。

(つづく)

【三輪尚樹】


<プロフィール>
三輪尚樹
(みわ・ひさき)
50代半ば。福岡市在住。マスコミ関連の仕事を長くしてきましたが、政治関連の取材・執筆の経験はほとんどありません。学生時代から30年以上、関東に居住していたため、福岡県の政治情報についてもほぼノータッチで生きてきました。政治不信。いわゆる「ノンポリ」で支持政党はありません。

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