NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
今回は、11月6日付の記事を紹介する。
10月24日、東京で開かれた日米識者会議「富士山会合」で、ジョージ・グラス駐日米大使が踏み込んだ提言をしました。曰く「日本をインド太平洋地域のドローン生産拠点とすべきだ」とのことです。日米で共同開発を進めることが「産業基盤と生産ハブを構築する絶好の機会となる」とも訴えたのです。
この発言の背後には、戦争のやり方そのものが変わりつつあるという大きな流れがあります。ウクライナでは年間数百万機のドローンが生産・消費され、数百ドルの機体が数百万ドルの兵器を破壊する場面が当たり前になりました。
米国は中国製ドローンを市場から締め出しつつ、自国軍に大量のドローンを配備しようとしています。一方、日本の防衛省は無人機関連の予算を1年で約2.5倍に増やしましたが、国内の産業用ドローンの約9割はいまも中国製です。
民生用ドローンの世界市場では、中国のDJIが圧倒的な存在です。業界推計では、民生ドローン市場におけるDJIのシェアは約70%、推計によっては90%を超えるとも言われています。
そこで、米国とすれば信頼できる同盟国に生産を分担してもらう必要が出てきたわけです。精密な部品を大量に作る力を持ち、品質管理に優れ、地理的にもインド太平洋の最前線に近い国。その条件に最も当てはまるのが日本にほかなりません。ビデオメッセージを寄せた高市首相も前向きな姿勢を見せています。
つまり日本は、完成品のドローンでは中国に大きく後れを取っている一方、部品の段階では強い力を持つ、ややいびつな構造にあるわけです。グラス大使の提言を産業政策として読み替えると、「部品の強みを、完成品の量産と供給網の構築につなげよ」というメッセージになります。
かつて日米は、自動車や半導体をめぐって激しく対立し、やがて協力関係を築いてきました。グラス大使が語った「日米の次の成功はドローン産業だ」という言葉が現実になるかどうかは、日本がこの分野を、防衛の問題としてだけでなく、次の成長産業として本気で育てられるかにかかっています。
数年後、インド太平洋の空を飛ぶドローンの「中身」がどこで作られているのか。その答えが、日米同盟の強さを測る新しい物差しになるのかもしれません。
著者:浜田和幸
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