外貨準備で巨大損失計上の犯罪的な行動
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NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、日本が外貨準備で巨大損失を計上してきた歴史について触れた、2月13日付の記事を紹介する。
アベノミクスは当初、「金融緩和」「財政出動」「成長戦略」の3頭立てであった。
米国金利が上昇してドル高の基調が生まれていたから、日本の追加金融緩和政策が効いたように見えた。ドル高=円安が進行して日本株価が上昇した。
同時に見落とせないことは、安倍政権が政権発足直後に13兆円規模の補正予算を編成したことだ。内容には問題がある。利権支出満載で、国民の生活を底上げする政府支出がほとんど盛り込まれなかったからだ。それでも、財政政策の基本スタンスを超緊縮から積極に転換した効果は大きかった。
結局のところ、財政金融政策を総動員して日本経済の改善を生みだしたのだ。これと円安が重なり、日本株価を上昇させた。このまま日本経済を安定飛行体制に移行させるべきであった。ところが、安倍政権は2014年に政策スタンスを一変させた。消費税大増税に踏み切り、せっかく浮上した日本経済を撃墜した。アベノミクス第二の矢と自称していた財政出動を、一転して、財政政策逆噴射に切り替えた。
私は、消費税増税が日本経済を撃墜することを警告した。消費税増税の影響は深刻になることを警告したのである。
日本経済新聞は、「消費税増税の影響軽微」の大キャンペーンを張った。しかし、結果は悲惨だった。2014年4-6月期の実質GDP成長率は、在庫と外需の影響を除くと、年率16%のマイナスに転落した。2014年度の実質経済成長率は-1.0%に転落した。日本経済は消費税大増税によって撃墜されてしまったのだ。
アベノミクスではなく、アベコベノミクスが実行された。このアベコベノミクスが続いている。2016年度の財政緊縮は過去最大級のものである。この状態を土台に、2017年4月の消費税率10%に突入すれば、日本経済が崩落することは間違いない。安倍政権は、まず、この過ちを正す必要があるのだ。
もうひとつ重大な問題がある。私は、昨年4月21日付ブログに、「安倍政権は政府保有米国債売却を決断せよ」と題する記事を掲載した。
現在、日本政府は約1兆2,500億ドルの外貨準備を保有している。外貨準備というのは、日本政府が日銀から借金して、そのお金で外貨建て資産を購入した残高のことである。そのほとんどが米国国債である。
2016年1月末時点の外貨準備残高は1兆2,481億ドルである。実は、この外貨準備によって、日本は巨大損失を計上してきた歴史を有する。2007年6月末を起点に事実経過を紹介しよう。
2007年6月末の外貨準備残高は9,136億ドルだった。当時のドル円レートは1ドル=124円だった。円換算で113兆円の外貨準備を保有していた。それから4年半の間に日本政府は外貨準備を3,931億ドル増やした。投入した資金は約39兆円だ。2012年1月末時点での投資元本は、113兆円+39兆円=152兆円だった。
ところが、この間に急激な円高が進行し、ドル円レートは1ドル=75円になった。その結果、外貨準備の円評価額が98兆円になってしまった。たった4年半で、なんと54兆円の巨大損失を計上してしまったのだ。空前絶後の悪夢である。
その巨大損失が2012年から2015年の円安で完全に消えた。だから、ドルが高いうちに、外貨準備のドル資産をすべて売却せよと指摘したのだ。
ところが、日本政府は1ドルもドル資産を売っていない。そして、最近の円高で、再び15兆円もの損失を計上しているのだ。
この犯罪的な行動を国会で糾弾しなければならない。※続きは2月13日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1365号「貸した金を返してと言えない恐怖の日米関係」で。
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