韓国経済ウォッチ~THAADミサイル配置の行方(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
2月7日の北朝鮮の衛星発射後に、韓国政府は、米国と「THAAD(サード)ミサイル」を韓国に配置するための交渉を開始すると発表した。
THAADミサイルは、アメリカのミサイル防衛(MD)システムの一環であるが、アメリカはTHAADミサイルを韓国に配置しようと韓国政府に圧力を加えてきたとされている。ところが、韓国の歴代政権はその間、THAADミサイルの配置を拒んできた経緯がある。
それでは、なぜ朴謹恵大統領はサードミサイルを配置することに急旋回したのか――。今回はその背景と、THAADミサイル配置が韓国経済にもたらす影響などについて取り上げてみよう。最近、韓国では、THAADミサイルの配置をめぐって、意見が賛否両論に分かれて鋭く対立している。とくに中国はTHAADミサイルの配置に対して強く反発しており、韓国政府は厳しい選択を迫られている。また韓国国内でも、一部の専門家は、THAADミサイルの配置は韓国の防衛にはそれほど効果がないだけでなく、結果的に中国とロシアを敵に回し、韓国にとっては大きなマイナスになりかねないという主張をしている。はたして韓国はこのような状況で、どのような選択をすることになるだろうか。
それではそもそも、THAADミサイルとは何なのか――。
THAAD(Terminal High Altitude Area Defense/サード)ミサイルは、米国のロッキード・マーチン社が開発したミサイルである。これは、発射された敵のミサイルが放物線を描きながら飛んできて目標物に向かって降下するときに迎撃するミサイルで、迎撃の高度は40kmから150km、射程距離は最大で200kmとされている。
従来の韓国のミサイル防御体制は、パトリオットミサイルを中心としたものであったが、パトリオットミサイルの場合、迎撃をする高度が20kmと低い。THAADミサイルを導入すれば、高高度で敵のミサイルを迎撃できるし、もし失敗したとしても、低い高度でもう一度迎撃できるため、確実に敵のミサイルを迎撃できるメリットがあるとのことだ。さらに、高高度で敵のミサイルを迎撃することで、こちらの被害を最小限にとどめることができるというメリットもあるようだ。一方、THAADミサイル配置を反対する側の意見としては、まずTHAADミサイルは実戦で使われたことがないことと、北朝鮮からミサイルが発射された場合、ミサイルは低い高度で飛んできて3~5分以内に韓国に着弾するため、THAADミサイルの効果は限定的だと主張している。
韓国国防省としては、韓国の状況に即した地対空ミサイルを開発し、独自の防御システムを構築しようとしていた。独自の開発は、技術の蓄積と自国産業の発展にもつながるので、韓国国防省としてはそうしたかったのだ。
しかし、最近の流れは、米国のTHAADミサイルを採用する方向になっている。THAADミサイルは、1基導入するのに約2兆ウォンの予算が要る。韓国全体をカバーしようとすると4基は必要になるので、合計8兆ウォンの予算が必要になることになる。(つづく)
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