2024年12月27日( 金 )

本当にシャープはホンハイ傘下に入るのか

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 経営不振に陥っているシャープは、25日に臨時取締役会を開催し、台湾の大手電子機器メーカー、鴻海(ホンハイ)精密工業による買収提案を全会一致で、正式に受け入れることを決めたと発表した。

 当初、国と民間が作る官民ファンド、産業革新機構から再建策の提案を受けていたシャープ。だが、支援額の規模で上回るホンハイと優先して交渉する方針を今月4日に決め、台湾にチームを派遣するなど本格的な交渉を進めていたという。

 ホンハイとの具体的な提案内容とは、

(1)ホンハイはグループでシャープの4,890億円の増資を引き受けて、シャープの株式66%を取
得して買収する
(2)シャープのメイン銀行であるみずほ銀行と三菱東京UFJ銀行が保有する優先株2,000億円のうち、半分を1,000億円で買い取りするなど、併せて1,600億円規模の資金を投入する。
(3)また懸案となっていた主力銀行のみずほ銀行と三菱東京UFJ銀行に対して、債権放棄などの金融支援は求めない
(4)雇用は現状を維持する
(5)赤字の液晶部門を売却することはしない

 というもの
 今後、双方が最終的に詰めの交渉を行ったうえで月内の合意を目指して最終調整を進めるとしている

 一方、革新機構の支援案は、最先端の液晶技術の海外流出を懸念する政府の意向を踏まえたもの。具体的には、3千億円規模の出資で経営権を取得した上で、不振の液晶事業を分社化し、同じ革新機構が出資する中小型液晶大手ジャパンディスプレイ(JDI)との統合を目指していた。
ただ革新機構の支援案は、シャープのメイン銀行である三菱東京UFJ銀行とみずほ銀行に対して1,500億円の債務を株式へ転換することや、両行が保有する優先株2千億円を実質放棄させるなど、最大3,500億円の金融支援を求めることも含まれていた。

ホンハイに決まった背景を検証

 シャープがホンハイ傘下に入ることで、双方ともにメリットを得る、と言われている。世界的な大企業であっても下請けメーカーでしかないホンハイにとって、シャープの技術力とブランドを手に入れることが出来るのは魅力的だ。そしてシャープは豊富な資金力を持つホンハイの傘下に入ることによって、経営を安定させることが出来る。だが他に生き残る道はなかったのだろうか。

<問われるメイン銀行の責任>
 ホンハイの傘下入りを決めた主導者は、メイン銀行のみずほ銀行と三菱東京UFJ銀行と見られている。
 その理由は下記の通りだ。

◆メイン銀行出身者が主導する取締役会議
・シャープの取締役13名のうち、プロパーは4名。メイン銀行出身者2名。取引企業出身者3名。官公庁出身者2名。弁護士2名の体制。
・取締役のNo.4はメイン銀行の三菱東京UFJ銀行出身である橋本仁宏取締役は、経営管理本部長。No.6はメイン銀行のみずほ銀行出身者である橋本明博取締役は、経営企画本部長。(いずれも常務執行役員を兼務)
・監査役5名。常勤監査役2名はプロパーとメイン銀行出身者各1名。残り3名は非常勤監査役で弁護士・公認会計士・警察庁出身者から各1名。
◆メイン銀行(みずほ銀行と三菱東京UFJ銀行)のメリット
・貸出金1,500億円は債務放棄しなくて良い。
・両行が保有する優先株2,000億円のうち、半分を1,000億円で買い取りする案となっており、債務放棄をしなくて良い。
・メイン銀行にもかかわらず、いざと言う時には、平気で企業を見捨てる都銀のエゴが透けて見える。

<保身に走った経営陣>
◆ホンハイの傘下に入ることで、高橋興三取締役社長を含む下記13名の取締役全員および監査役5名も当面留任し、シャープの業績悪化に歯止めをかけられなかった経営責任も問われないことになる。
◆産業革新機構の案では、メイン銀行に債務放棄を求めており、銀行出身の取締役にとっては絶対に受け入れることはできなかったものと推測される。
・また産業革新機構の案を採用すれば、元取締役まで経営責任を問われる可能性もあり、当初から保身によるホンハイへの傘下入りしか、選択の余地はなかったものと見られている。

<雇用は守られるか>
 シャープ単独の従業員数は約1万7千人。連結では約4万8千人。従業員の雇用は守られると言うが、そうなるかどうかは不明だ。高齢の従業員からは、「むしろ産業革新機構の方が、雇用を守ることを要求できるので良かったのでは」との声も出でいる。

<消費者の反応>
 メイン銀行が見捨てたシャープ。外国資本に身を売ったシャープ。経営陣が保身に走ったシャープ。日本が誇る最先端の液晶技術を海外流出させるシャープ。果たして日本の賢い消費者は今後もシャープ製品を買い続けるのだろうか。

 まだ正式契約はしていない。過去に破断した経緯もある。シャープは契約保証金1,000億円を契約に盛り込んだと言うが、新たに3,500億の債務の債務が発生するとの情報がホンハイから流されている。本当にシャープはホンハイの傘下に入るのだろうか。まだまだ紆余曲折はありそうだ。

【北山 譲】

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