城ガールが巡る日本の名城~信州の黒漆天守・松本城(5・前)
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「日本のお城」といえば、どのお城を想像するだろうか?
国宝・松本城は現存12天守の1つであり、戦と平和を併せた独特の美しさを持つその姿は、国内外の多くの人を魅了し続けている。
今回は、“信州のお城レポート”の第一弾として、長野県松本市の松本城編をお届けする。松本城とは
松本城は、永正年間(1504~1520年)の初めに築城された深志城が始まりとされている。この深志城は、信濃の守護・小笠原氏が築城した林城を守るための支城の1つだった。
武田信玄による信濃侵攻により、1550(天文19)年に小河原氏が敗走、林城や深志城は落城した。信玄は深志城を信濃支配の拠点とし、武田四天王の1人馬場信春を城代とする。
武田氏滅亡後、1582(天正10)年の本能寺の変の動乱の虚に乗じて、小笠原氏が深志城を奪還。その後、名を「松本」と改めた。
「松本」の城主は6家(石川、小笠原、戸田、松平、堀田、水田)23人おり、城と城下町の基礎は石川数正と息子康長が基礎を築いた。天守が築造されたのは、息子康長の代(1593年~1594年)と言われている。いざ、信州(信濃)へ!
福岡空港から、直通便で信州まつもと空港へ。お城巡りでLCC以外の航空会社を使うのは初めてなので、ドキドキしながらFDA(フジドリームエアラインズ)の機体に乗り込む。
1時間半ほどで信州まつもと空港へ到着。日本で一番空に近い空港(日本一標高が高い場所にある)の風は冷たい。空港からバスに乗り、30分ほどで松本駅に到着。ホテルに荷物を預け、本日の目的地である松本城へと向かった。初見の感想は、「写真で見たお城だ」だった。多くの観光客が訪れており、人種を問わす皆が松本城天守に感動の声を上げていたが、その横で私は1人ふわふわした気持ちのままでいた。あまり実感が沸かなかったのだ。
黒門を通り、本丸へと向かう。写真では見たことがなかった、正面から見た松本城の姿が見える。そこでようやく“ここにいる”という実感が沸いてくる。
広い本丸を見回しながら、天守へ向かって歩く。入口から見た天守内部は暗く、先が見えない。この光が乏しく、おどろおどろしさが現存天守に来たと感じさせてくれる。入口階段を登り、暗い天守内へと足を踏み入れた。※クリックで拡大
戦と平和を併せた松本城
松本城天守を解説したい。写真は向かって左から、月見櫓、その後ろに見えるのが辰巳附櫓、横に大天守、渡櫓、乾小天守と並ぶ。
大天守、渡櫓、乾小天守は1593~94(文禄2~3)年頃に石川康長によって建てられた、「戦いを想定した建物」であるのに対し、月見櫓と辰巳附櫓は寛永年代に松平直政によって建てられ、その名の通り“月見”や宴を楽しむための「風雅な建物」となっている。松本城天守は、火縄銃での攻防を想定した作りをしている。壁は厚く、1階と2階で28.8~29.4cmもあり、火縄銃の弾を通すことはない。弓や鉄砲を撃つための狭間は、矢狭間が60カ所に鉄砲狭間が55カ所、石垣からの敵の侵入を防ぐ石落としは11カ所も設けられている。かつては三重の堀まであったのだから、この攻守を兼ね備えた造りに驚かされる。
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天守は五重(5階)に見えるが、内部は6階構造だ。外からは見えない3階は、普段は倉庫として使い、戦の時は武士がこの場所に集まっていたという。天井も低く僅かな光しか届かないこの階に、大勢の武士が集まっていたとしたら…かなり恐ろしい光景だ。
月見櫓に入ると、三方が吹き抜けとなり自然光を取り入れた室内の明るさに驚かされる。開放的で優美な雰囲気は、まるで舞の舞台に上がったかのような気持ちにさせてくれた。辰巳附櫓と月見櫓は、光の取り入れ方1つをとっても、大天守などとは大きく異なる。吹き抜けから望む本丸は美しく、まったりとした時間が流れているような気がした。戦乱を生き抜くための天守と、風情を楽しむための櫓。松本城は、戦と平和を併せた姿をしているのだ。
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(つづく)
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