旧統一教会や関連団体と福岡保守政界の知られざる関係性(中)

 東京高裁は4日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に解散を命じた。安倍晋三元首相の事件後、自民党などと教団の関係が大きくクローズアップされたが、第三者委員会の調査が行われることなどはなく、全貌は明らかになっていない。旧統一教会と福岡政界は、長年にわたり深い関係があった一方、保守勢力の間では教団への批判も根強かった。なぜ被害の拡大を防ぐことができなかったのか。

安倍晋三氏が教団イベントに祝電

 前回、福岡の保守系団体の重鎮・辻幸男氏による「資料(「これが統一教会の秘部だ」)の送付について」と題する文書を紹介した。

 文書のなかで「近年、男女共同参画問題を中心に動きを活発化していた(文鮮明率いる統一教会の政治団体)が気になっておりました。日本会議福岡や過激な男女共同参画の是正に努力する保守系の人々に接点を持つ行為に出てきていたからです」と記載されているが、どういうことなのか。

 まず、当時の情勢を確認しておきたい。文書が出された平成18(2006)年4月は、小泉政権の終盤で、安倍晋三氏が首相に就任(同年9月26日)する直前である。山上被告が事件を起こすきっかけの1つとなった「UPF・天宙平和連合」が同年5月に福岡市で開いた「祖国郷土還元日本大会」開催直前の時期でもあった。辻氏らは敏感に教団の政治工作を警戒し、その意向を表明したのである。

 大会には安倍氏や鹿児島選出の保岡興治元法相らが祝電を送っていた。安倍氏は、「誤解を招きかねない対応であるので、(祝電を送った)担当者に注意をした」とコメントしていた。安倍氏の祖父・岸信介、父・安倍晋太郎両氏が教団や勝共連合と深いつながりをもっていたことは知られるが、この時期の安倍氏は、霊感商法や北朝鮮に接近する教団を警戒していた。

 旧統一教会は2000年代前半、自民党を中心とする保守系政治家と関係性を築きつつ、表立って関係を明らかにすることは控えていた。90年代の霊感商法批判があったからである。

久留米市を中心とした活動

 辻氏らによる文書にも、冷戦終結後、福岡の勝共連合は久留米市を中心に活動していたとある。久留米にも統一教会の教会があり、市議選の支援など活発に活動していた。

旧統一教会久留米家庭教会
旧統一教会久留米家庭教会

    筑波大学学長などを務めた福田信之氏の編著による『21世紀の希望と統一運動:大学教授がみた世界救済への道』(光言社・1990年)に、東和大学や純心女子短大教授を務め、九州勝共教授講師団副会長(当時)の武藤正行氏が興味深い寄稿を寄せている。光言社は教団関連の出版社である。

 武藤氏は「当時、勝共連合は福岡県民教育協議会の大橋三郎君とともに、あたかも教育協議会の青年部のようにして活躍していた。護国神社の清掃をするにしても、建国記念日の記念式典を催すにしても、率先して手伝っていた」と述べたうえで「そこで大橋君から『森君という志の立派な青年がいるから会ってみないか』と誘われた」とあるが、当時、福岡勝共連合の事務局長で、後に久留米市議会議員になり、副議長まで務めた森多三郎氏のことである。

 武藤氏は「当時、勝共連合は文氏(文鮮明)が韓国人であるために非常に色眼鏡でみられていた」とも述べていたが、森氏はどのように考えていたのか。市議引退後、久留米市内の自宅を訪ねた際、話を聞く機会があった。

 「大橋先生に大変お世話になったし、辻君とも立場は違ったが、根っこの部分は通じるものがあった。俺たちは日本人であり、韓国の本部が何を言おうが日本の保守だ」と語っていた。

 福岡県民教育協議会(県民教)は、県知事選挙に絡んで社会党・共産党の革新勢力が日本教職員組合(日教組)を中心として福岡県の公立教育現場に強い影響力をもった状況を是正するために、保守系議員、企業経営者、日教組を脱退した教職員などで結成された。県内各地で集会を開催するなど、日教組対策に苦慮していた県教育委員会にとって頼もしい味方だった。

 元事務局員の女性は「もうずいぶん昔の話だが、県民教に統一教会・勝共連合の関係者が出入りした時期があった」と語った。社会党・共産党推薦の奥田八二県政が終わると、県教委OBが役員に就任。県民教の活動も穏健になり、2006年に解散している。

 辻氏が文書で示した「勝共連合は、久留米を中心に活動」というのは保守系に人脈のある森氏を市議に推し、保守系団体に接近していった動きのことで、憲法改正やスパイ防止法制定といったテーマとともに、教育問題やジェンダー平等政策に対する反対運動に取り組んでいた。

 安倍氏の事件後、久留米市議の森崎巨樹氏がいくつかのメディアで、「久留米は教団の影響力が強い」という趣旨の発言をしたが、長年にわたり教団や関連団体の浸透が図られてきた実情を、実名で告発する勇気ある行動だった。

 旧統一教会系の日刊紙『世界日報』は02年から07年前後にかけて、性教育やジェンダーフリー教育に対する批判キャンペーンを紙面上やネットニュースで繰り広げていた。同時期、日本会議など保守系団体は、自民党や民主党の保守系議員と連携して全国の自治体で制定が相次いだ男女共同参画条例に、男らしさや女らしさの視点を盛り込み、行政への苦情処理機関設置に反対するなどの対案を出し、ジェンダー平等や選択的夫婦別姓を求めるリベラルな人々と激しい論争を展開していた。

 ジェンダーフリーバッシング問題に詳しい山口智美立命館大学国際関係学部教授は「男女共同参画条例に対する反対運動は、『草の根保守』を中心に展開された」「日本会議や関係する宗教右派、統一教会系の世界日報などのキャンペーンによる『家庭』の尊重を重視する一方『性的指向』やジェンダー概念が攻撃された」と語った。日本会議の人々と統一教会系では、重視する点がやや異なっていたという。

(つづく)

【近藤将勝】

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