NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
今回は、6月5日付の記事を紹介する。
このところ、日本国内でウズベキスタンからの留学生や労働者が急増し、東京の「日暮里」や「新宿」などを中心にウズベク・コミュニティが次々に誕生しています。
その背景には、「主要な出稼ぎ先だったロシアの国際的孤立」と、「日本の少子高齢化に伴う積極的な国家間での人材誘致・受け入れ枠の拡大」という、地政学的・構造的な理由があるようです。
2026年現在、在日ウズベキスタン人は7,000人を優に超えています。ウズベキスタンは若年層の人口割合が極めて高く(人口の半数以上が30歳未満)、国内の雇用吸収力が追いつかないため、伝統的に「ロシア」が最大の出稼ぎ・労働移民先でした。
しかし、2022年のウクライナ侵略以降、ロシア経済の悪化、ルーブル安、更には外国人労働者がロシア軍に強制徴兵されるリスクが激増したことを受け、ウズベキスタン政府と若者は出稼ぎ先の多角化を余儀なくされ、治安が良く給与水準も安定している「日本」を重要な戦略的就労先として選ぶようになったわけです。
彼らは母国で多額の借金をして来日費用を工面しており、日本の「週28時間の法定内アルバイト」やそれを超える労働で、投資を回収し母国へ送金するサイクルを作っています。
日本の深刻な人手不足(建設、介護、製造、農業、サービス業など) と、ウズベキスタンの労働力送り出しニーズが完全に一致した結果と言えるでしょう。
2025年6月、ウズベキスタン移民庁と日本の一般財団法人は、「今後5年間で1万人のウズベク人労働者を日本で受け入れる」という大規模な協定を締結。
実は、ウズベキスタンは中央アジアの中でもとりわけ強い「親日国家」です。第二次世界大戦後、シベリア抑留の末にウズベキスタンに連行された旧日本兵たちが、首都タシケントの「ナボイ劇場」の建設に従事しました。1966年の大地震でもこの劇場だけは無傷で残り、日本人の真面目で高い技術力が現地で伝説として称えられ、立場を超えた友好の土台となっています。また、ウズベキスタン人は目上の人を敬う文化や礼儀正しさを重んじる気質があり、日本の社会や職場環境に順応しやすい特徴を持っているようです。
既に国内では在日ウズベキスタン青年協会などが設立され、駐日大使館と連携しながら留学生の進学・就職サポートやメンターネットワークが機能し始めています。
こうした両国の交流を全面的に支援しているのがウズベキスタンの駐日大使アブドゥラフモノフ氏で、1974年生まれの52歳ですが、外交官としては非常にユニークなキャリアの持ち主です。
まずは、母国語のほか、ロシア語、英語、アラビア語、そして日本語を流暢に操るマルチリンガルという側面でしょう。 若い頃に北海道への留学経験があり、日本の文化、ビジネス習慣、地方の特性を深く理解しています。また、伝統的な生え抜きの外交官ではなく、かつて日本で起業し、貿易・コンサルティング会社の経営者として成功したビジネスマンでもあるのです。そのため、「形だけの外交交渉」ではなく、「どうすれば日本企業がウズベク人に投資し、雇用が生まれるか」という経済・実務ファーストの視点で動いています。
ビジネス界での実績を買われ、ウズベキスタン外務省の副大臣などを歴任した後、国家戦略の最重要拠点である「駐日大使」に抜擢されました。日本への労働者・留学生の受け入れ拡大を実現するため、自ら栃木県や大分県、群馬県などの地方自治体、商工会議所、監理団体を直接訪問しています。
「ウズベキスタン人材ポテンシャルビジネスフォーラム」などを地方で共催し、「真面目で親日的なウズベク人の若者を、地元の農業・製造業・介護の現場の即戦力として受け入れてほしい」と直談判を続けているわけです。
更に言えば、経済安全保障の観点から日本が中央アジアの資源を必要としていることを見越し、三菱商事や三井物産などの大手総合商社、エネルギー・金属鉱物資源機構の幹部と緊密に接触を重ねているではありませんか。
要は、「中国に依存しないサプライチェーンを、我が国のタングステンやリチウム、銅鉱山への投資を通じて一緒に作りましょう」と、日本のハイテク技術を呼び込むためのコーディネーターとしても暗躍しているわけです。日本にとっては、在日17年という実に心強いパートナーに他なりません。
著者:浜田和幸
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