2024年11月05日( 火 )

城ガールが巡る日本の名城~真田十万石のお膝元・松代城(7・前)

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 長閑な町にひっそりと佇む信州・松代城(長野県長野市)。今は静かなこの城も、川中島の戦いの前進基地として、武田信玄の命で築かれた歴史を持つ。松代藩初代藩主となった真田幸村の兄・真田信之(信幸)により、松代の地は真田十万石の城下として栄えた。
 今回は“信州のお城レポート”第三弾として、松代城編をお届けする。

松代城とは

 1560(永禄3)年頃に、武田と上杉との川中島の戦いにおいて、武田の前進基地として築かれた海津城が始まりとされている。城の北西には千曲川が流れる自然の要害で、何重もの堀に囲まれていた。1600(慶長5)年に城主となった森忠政によって、二の丸・三の丸が整備され、この時石垣や土塁も築きなおされたといわれている。1622(元和2)年に真田信之が松代に移封、約250年間は松代藩真田家の居城となる。1872(明治5)年に廃城されるも、1981(昭和56)年に真田邸(新御殿)と共に国の史跡に指定された。
 1995(平成7)年から2004(平成16)年にかけて復元工事が行われ、現在の姿となった。

松代を目指す

 長野駅と松代駅を結ぶバスに乗り込む。松代駅は廃線になっているため、駅と駅の間をバスで移動する。車窓から見える景色は、次第にビルから田んぼへと変わっていく。長野と松代を結ぶバスは、バス停「川中島古戦場」を経由しているため、松代城と川中島古戦場を容易に行き来することができ大変便利だ。川中島の戦いと、その戦いの拠点となった松代城、どちらも外すことはできない。
 古戦場から10分でバス停「松代駅」に到着。地図は持っていたものの、方角が分からずガイドの方に尋ねると、「あっちですよ!あっという間すぐ近く」とのこと。教えられた通りに歩いていくと、本当にあっという間に松代城が見えてきた。

復元された、美しい城

matusiro 松代城は美しく、思わず「きれい!」と声を上げてしまう。当日はあいにくの曇り空だったが、それを感じさせない輝きを持っていた。手前から、太鼓前橋、太鼓門と並んでおり、真っ直ぐ伸びる続塀と、整備されたお堀とが相まって、まるで一枚の絵のようだ。

 太鼓前橋を渡り、太鼓門を見上げる。本丸内で一番大きく、間近で見るとかなりの迫力がある。この太鼓門は2つの門で構成されており、手前の門は橋詰門という。橋と門の出入り口は横にズレており、橋からまっすぐ進むと石垣にぶつかってしまう。このような形を枡形といい、手前の門を通った敵は次の門に阻まれ、停滞している隙に3方向からの攻撃を受ける。このようにお城の門は、攻撃・防御としてとても重要な役割を持っているのだ。
 門を通り本丸に入ると満開の桜がお出迎え。自然と顔もほころんでしまう。

 本丸内には建物がないため、とても広々としていた。満開の桜の下で、ベンチに座り花見を楽しむ親子や老夫婦の姿がとても微笑ましい。戌亥隅櫓の石垣に登り、本丸と辺り一帯を見下ろしてみる。本丸を囲む石垣やお堀が、当時の松代城の姿を思い起こさせてくれた。やっぱり曇り空なのが惜しい!松代城を再訪する理由の1つとして、心に記録した。

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災害に悩まされた過去

 今はのんびりと平和な時間が流れるこの地も、以前は災害に悩まされていた。
 かつて松代城の背後には千曲川が流れ、天然の要害としての守りを強固にしていた。しかし、その千曲川に幾度となく苦しめられた記録が残されている。以前の千曲川は度々洪水を起こし、お城は修復を余儀なくされた。太鼓前橋だけでも4回以上橋が流されてしまったそうだ。現在の松代城を取り囲むお堀をぐるぐると見て回るが、お堀の美しさばかりに目が行き、川に繋がっていた痕跡を見つけることはできなかった。

 松代城の不運はまだ続く。城内で度々火災が発生していたのだ。1625(寛永2)年に二の丸、1717(享保2)年に本丸・二の丸・三の丸、1853(嘉永6)年に花の丸で火災が発生。この水害と火災により、松代藩は、長い間財政難で苦しむことになってしまう。初代藩主の真田信之が20万両の大金を持って松代に入ったが、その貯金を使い果たしても足りず、結局幕府から1万両を借りることになった。
 廃藩置県の翌年に松代城は廃城。城内の建物の取り壊しが行われ、花の丸に移された御殿は取り壊しを免れるも、同年6月に火災で焼失。現在の松代城は、江戸時代後期の姿を再現したものだという。

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(つづく)
【城野 円】

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