2024年11月05日( 火 )

城ガールが巡る日本の名城~真田十万石のお膝元・松代城(7・中)

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 長閑な町にひっそりと佇む信州・松代城(長野県長野市)。今は静かなこの城も、川中島の戦いの重要拠点として、武田信玄の命で築かれた歴史を持つ。松代藩初代藩主となった真田幸村の兄・真田信之(信幸)により、松代の地は真田十万石の城下として栄えた。
 今回は“信州のお城レポート”第三弾として、松代城編をお届けする。

松代の城下町

 松代城を離れ、松代の城下町を散策することに。是非見たい!と思っていた真田邸(新御殿)に向かって歩いていると、途中で大きな門構えの屋敷が見えた。案内を見ると、松代藩家老の小山田邸とのこと。残念ながら中に入ることが出来なかったので、写真撮影だけ行う。重厚な黒門がとてもかっこいい。小山田邸を過ぎ、ほどなくして真田邸に到着。現存する建物と聞いていたが、想像以上の渋さだ。ドキドキしながら受付を済ませ、屋敷の中へと入った。

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 真田邸(新御殿)は1864(元治元)年に松代藩9代藩主・真田幸教が義母・貞松院の住居として建てたもので、明治以降は真田氏の居殿として使用されていた。35ある部屋は用途によって大きさや装飾が異なっており、各部屋は当時の面影を再現するかのように、それぞれ用途に見合った小道具が並べられていた。

 訪問客との対面の場として使用されていたという「表座敷」は、高い天井にひし形の壁紙と、部屋には凛とした雰囲気が漂う。庭園は「水心秋月亭(すいしんしゅうげつてい)」と名付けられており、縁側に座り眺めることもできる。せっかくなので、私も縁側に座り庭園を鑑賞。連日信州を巡り、大分足に疲れがたまっていたので、ほっと一息つく。他にお客さんも少なかったので、一人で縁側を独占するという贅沢なひと時を味わった。

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 真田邸を出て文武学校に向かう。失礼ながら、この時は“何となく見てみたい”くらいの心持ちでいた。しかし、いざ敷地内に入ってみると、そこにはまるで時代劇の舞台に迷い込んだとかのように、時が止まった風景が広がっていた。しかも建物内を自由に見学することができるという。“何となく”きて大正解だった。

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 文武学校は1853(嘉永2)年に建てられたもので、8代藩主・真田幸貫が藩士の子弟に学問・武芸の奨励を目的に建設を計画し、9代藩主の幸教が完成させた。8歳から14歳くらいまでは文芸、15歳から35歳くらいまでは武芸を習ったといわれている。受付で貰ったパンフレットを見ると、そこに実際に武芸を習うプログラムの案内が書かれていた。「ここで弓道を習ってみたかった・・・」と、弓道場で心の底からがっかりした。

 全ての建物を回った後も、名残惜しくてなかなか離れる気になれなかった。ふと見ると、おじさんが一人縁側に腰掛けぼーっとしていた。それを真似して縁側に腰掛けると、目の前には1本の大きな桜、奥に立ち並ぶ文部学校の建物。思わず見惚れていると、おじさんに「いい景色だよね。ここの席気に入っちゃった」と声をかけられた。私も「とても素敵です。ずっと眺めていたいくらい」と返し、しばらく(少し距離が離れているものの)見知らぬおじさんと二人でぼーっと美しい景色を堪能した。

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不思議な出会い

sirai 松代藩の家老の小山田邸や、目付役を務めた家臣の樋口邸など、数多く残る武家屋敷を巡りながら、現在休憩場となっている中級藩士の白井邸に立ち寄った。そこには地元のボランティアガイドの方が3人待機しており、「あらお客さん。暖かいお茶があるから、ゆっくりしていってね~」と手厚い歓迎を受ける。
 お茶と小梅を頂いていると、「今日はどちらから?」と聞かれたので、「福岡です」と答えると、大層驚いた顔で「福岡!?福井じゃなくて福岡!?」と返された。こちらの人は福井と福岡を比較するのか、と感心しつつ「福岡ですよ~」と答えると、「写真撮った?記念写真!撮らなきゃ!」と、わざわざ文武学校まで案内し、記念写真を撮ってくれた。「来てくれて本当に嬉しい。わざわざ松代まで…。本当ゆっくりしていって!」と、本当に嬉しそうな表情で言われ、思わず照れてしまう。

 別れ際、「あんまり相手してあげられなくて、本当にごめんなさい!また、是非来てね!」とわざわざ自分の荷物から「松代の味だから。美味しいから」と飴をくれた。飴には沖縄黒飴の文字。不思議に思いつつ、飴は美味しく頂いた。

(つづく)
【城野 円】

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