熊本地震被害のオートポリス、復旧のメド立たず~日本のレースシーンにも影響(後)
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オートポリスは4月22日、国内ツーリングカーレースの最高峰「2016 AUTOBACS SUPER GT IN KYUSHU 300KM」の開催延期を発表した。この早い対応には評価する声は多いが、関係者の一人は「むしろ今年の開催はないと思った方がいいかもしれない」と話す。レースの開催にあたってはマシンや機材を積んだ大型車両が押し寄せ、ドライバーやスタッフ、関係者らの宿泊先も確保しなければならない。例年宿泊先となっているホテルは多くが今後、復旧に当たる作業員が宿泊する予定になっているため、運営者側としては復旧事業を妨げるようなことはしたくない。サーキットの年間スケジュールは細かく決まっているので代替案を出すのも難しく、そうなれば今年の開催を見送らざるを得ないだろうということになる。
ビッグイベントの休止は仕方がないとはいえ、関係者は「かわいそうなのはFIA―F4に出場している若手選手だよ」と眉根を潜める。FIA-F4とは世界自動車連盟(FIA)公認で開催されるフォーミュラレースの入門シリーズ。世界各地で開催されており、日本でも2015年から始まった。年間7大会14レースが開催され、F1を目指す若手の登竜門として注目を集めている。オートポリスでもスーパーGTと併催する予定だったが、こちらも延期になった。もちろん開催の見込みは立っていない。「スーパーGTと違って、FIA-F4は土日で2レースを実施する。これが無くなるのは、年間選手権を戦ううえで非常に厳しくなる」(関係者)。スーパーGTのハンドルを握るトップレーサーは安定した実力を見せれば、何年も乗り続けることは可能だ。しかしFIA-F4レベルのレーサーはたくさんおり、ステップアップを目指して競争は激しい。若い彼らにとっては1年が勝負。そこで負ければレーサーとしての未来はないのだ。天災とはいえ、「若手のチャンスが奪われてしまうのは何ともやるせない」と関係者は首を振る。地震は被災地だけでなく、全国各地の多くの人の人生に影を落としている現状を見せつけられた。
サーキットのそばを車やバイクが通りかかるものの、「うかれ亭」に立ち寄る人は少ない。そのなかで熊本市で被災した男性は「避難所にいたが、小学校の校長先生によって対応が違うのには参った。火を焚いていいという先生もいれば、ダメと言う先生もいる。どちらの対応も正しいが、被災者にとっては火があるほうがありがたかった」と苦笑いする。北九州市からボランティアに参加したという男性も「とにかく現場は混乱していた。避難所の小学校で休憩に使ってくださいと枕を渡され、こちらもバタバタしていたのでてっきりもらったものだと思い込んでしまった。ところが帰ってみると、そこの小学校の保健室の枕だと分かったんです」と、これからその小学校に枕を返しに行くところだと話した。話される被災地の様子は深刻だったが、会話の間は笑顔が絶えなかった。抜けるような青空が彼らの心をほぐしたのだろう。とても気持ちいい風も吹いていた。
地震の被害は熊本だけでなく、大分でも発生していることを忘れてはならない。4月29日には大分県中部を震源とする震度5強が観測され、JR由布院駅のガラス窓が割れた。30日に日田市内の上空を数機の自衛隊のヘリコプターが湯布院方面に飛行していくのが見えた。いつまた大きな地震がやってくるか分からない。地震の被害を確かめようと訪れたオートポリスは、その恐ろしさをあらためて教えてくれた。
(了)
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