2024年11月27日( 水 )

福岡市が市有地の不法占有長年放置 破格の安値で譲渡へ

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
写真左が占有された市有地の一部。右は筑紫丘中学校の外周道路<

写真左が占有された市有地の一部。
右は筑紫丘中学校の外周道路

 福岡市が市有地を不法に占有されながら、長年にわたって放置していたことが明らかになった。市は当該地を有償で譲渡することで占有者と合意。所管する市教育委員会教育環境課は「市としては退去を求めてきたが合意が得られなかったため、例外的な措置として売却することにした」としている。

 教育環境課によると、占有されていたのは福岡市南区筑紫丘2丁目の筑紫丘中学校の学校用地88.73平方メートル。同校の外周道路である筑紫丘241号線に隣接しており、現在は個人宅の車庫などが建てられている。もともとは1961年1月、同校の運動場を拡張することを目的に取得し、外周道路を整備した際に余った土地だったという。そこに隣接する国有地に個人の住宅が勝手に建てられており、市有地は自宅敷地として使われていた。

 2010年12月、国有地と市有地の占有が20年以上経過し時効により所有権を取得したとして、居住者の親族が国と福岡市を相手取り、福岡地裁に移転登記手続きを求める訴えを起こした。国と市は時効成立を示す記録が存在していないことから訴えは不当であるとして応訴していたが、今年1月に国は原告と国有地を評価額の2分の1の580万円で譲渡することで合意。5月には同地裁から市に対し、市有地を減額譲渡する和解勧告があり、国と同様に評価額の2分の1の155万2,775円で譲ることにした。

 市は提訴されるまで占有の事実を把握しておらず、提訴後に境界確定をして初めて判明したという。市側に道路整備の残余地がそのまま放置されていた経緯の記録が残っておらず、また原告側にも占有の記録がなかったため、いつから占有が始まったのかわかっていない。一般的に市有地の占有が判明した場合、退去もしくは原状復帰の勧告が原則。または市の評価額、あるいは公募によって売却することになっている。市は今回の土地について、原告に年額9万3,116円の使用料10年分の支払いを求めたが拒否され、原告が購入の意思を示したことから地裁の和解勧告に応じることにした。

 福岡市教委が所管している市有地で、不法占有が判明しているのは名島小(105平方メートル)、和白小(40平方メートル)、東吉塚小(150平方メートル)、千代中(37平方メートル)の4件。いずれも学校敷地の境界部分にある幅50センチメートルほどの細長い土地であり、個人宅の一部などがはみ出すなどの状態になっているという。これらについては裁判所に提訴せず、住民らに退去や立ち退き、売却などを求めることで対処するとしている。

 教育環境課は「今回は住宅の敷地として使えるまとまった土地という、非常にまれなケースだったと認識している。評価額の2分の1で売却することにしたのも国の取扱い規定に準じたものであり、あくまでも例外として今後はないようにしていく。新たに境界確定で市有地の占有が判明した場合は、退去と原状復帰の勧告を原則として対処していきたい」としている。

【平古場 豪】

 

関連記事