部材や鉄筋量を減らす耐力偽装!?警告した元・一級建築士に聞く(前)
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構造設計において建物に必要な部材や鉄筋量を減らす耐力偽装が長年にわたって行われていたとする警告書(緊急提言)を公表した「元・一級建築士」の仲盛昭二氏に、警告の内容などについて話を聞いた。
――構造設計では通常、どのようにして部材の大きさや部材や鉄筋量を決めるのですか。
仲盛 通常、構造設計者は、構造計算プログラムを使用して、建築基準法令や学会基準などさまざまな基準に適合して、建物の構造安全性を確保できるように、建物の構造に関わる部材をどのような大きさにするか、また鉄筋・鉄骨部材をどれだけの量使わなければいけないか決定しています。
――どのようにして偽装が行われていたのですか。
仲盛 構造計算プログラムに忠実に従うと、意匠設計者やゼネコンなどの要求に沿わない過大な部材寸法や鉄筋量などが発生する部分が生じて、その不都合な結果を回避するために、構造設計者自らが、構造計算書を意図的に操作して、建物に必要な部材や鉄筋量よりも減るように計算書を出力するのです。その行為は、構造計算書の偽装そのものです。日本中の多くの構造設計者が、長年にわたり日常的恒常的に行ってきたのです。
――意図的な操作とは具体的には?
仲盛 詳しくは専門的なので警告書を読んでいただきたいのですが、代表的な事例は、RC造の建築構造設計では、梁・柱の接合部の検討、鉄筋の付着の検討、柱・壁のスリット問題です。たとえば、梁・柱の接合部の検討を行うように明記されていますが、「計算が複雑で面倒くさい、寸法が大きくなり過ぎ意匠的にも物理的にもうまく収まらない、断面肥大により建築コストが上昇する」などの理由で、意図的に検討事項から除外したり、検討しても計算結果としては出力しないなどの方法で、構造計算を終わらせていたのです。計算プログラムで接合部の検討ができない時代でも、その部分について構造設計者が手計算により検討すべき項目でした。
姉歯事件でプログラムソフトを改ざんしたのとまったく同じように、「意図的操作」を加えて、構造計算の一貫性を欠いた「耐力偽装」そのものだと言えます。――なぜ、建築確認審査で気付かれなかったのですか。
仲盛 建築確認を審査する全国の確認審査機関(特定行政庁)には、専門知識を持ち合わせていなかったために、なんら疑念を抱かず、指摘することなく、「適法」と判断して、確認済証を交付していました。しかし、2007年に改正建築基準法が施行され、民間確認機関の参入が急激に増え、事実上アマチュアの行政に代わって、プロの構造技術者が審査を担当するようになったため、厳しく確認審査を行うようになり、とくに接合部の検討がされているか指摘されるようになったのです。指摘されるようになった07年以前は、接合部の検討を行うと、梁などの断面、とくに梁の幅が極端に大きくなるので、その不都合を回避する手段として、構造設計者のほとんどが、耐力偽装を平然と行っていたのです。3階建て以上のRC造建物の設計で、構造設計者が、接合部の検討を行うことによって、この部材の肥大化(コスト上昇)に頭を抱えているのです。
(つづく)
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