2024年12月23日( 月 )

耐力偽装を告発した「元・一級建築士からの警告」(全文)(1)

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 鉄筋コンクリート造(RC造)の建物の構造設計で必要な部材や鉄筋量を減らす耐力偽装が行われていたと告発した元・一級建築士の仲盛昭二氏の警告書の全文を紹介する。


元・一級建築士からの警告(緊急提言)

平成28年7月4日
協同組合建築構造調査機構
代表理事 仲盛 昭二

はじめに

 これから私が述べることは建築業界を去る決意をした「元・一級建築士」ゆえに発信できる内容です。わが国の建物の構造設計に携わる構造設計者(構造設計を担当する建築士)が、今日まで、誰一人として指摘することが出来なかった、極めて重大な耐震強度に関わる問題点をここで明らかにしておかねばならないと考えたからです。
 現役の構造設計者は、意匠(デザイン)設計事務所やゼネコン・工務店等との密接な繋がり(上下関係)の中で仕事を遂行しており、持ちつ持たれつの関係を保っています。そのような抜き差しならぬ関係の中で、構造設計者は、専用の構造計算プログラムを用いて建物の構造に関わる部材寸法や鉄筋、鉄骨部材等を決定しています。
 しかし、構造計算プログラムに忠実に従うと、それら意匠設計者及びゼネコン等の要求に沿わない過大な部材寸法や鉄筋量等が発生する部分があり、構造設計者はその不都合な結果を回避する為に、自ら、「構造計算書を意図的に操作して」部材及び鉄筋量などを、必要数量よりも減じて出力する行為を長年に亘り日常的に行ってきました。その行為は、明らかな「構造計算書の偽装そのもの」ですが、構造設計者は、そのことについて、一切、口外してきませんでした。それを公にすれば自らの仕事の道が断たれることにつながるからです。現役の構造設計者は、このことについて発言できない立場なのです。
 構造計算書の偽装が、どのような事柄に対して行われてきたのか、以下に、説明致します。

序論

 鉄筋コンクリート造(RC造)の建築構造設計(※1)では、構造計算により「梁・柱接合部の検討」を行なうように明記されています。以前の計算プログラムでは、接合部の検討が出来なかったので、その部分については構造設計者が、手計算により検討すべき項目でした。
 しかし、実際の構造計算の現場では、殆どの設計者が、「計算が複雑で面倒くさい、寸法が大きくなり過ぎ意匠的にも物理的にもうまく収まらない、断面肥大により建築コストが上昇する」等の理由で、意図的に「これらの項目を検討事項より除外」、または「検討しても計算結果としては出力をしない」などの方法を採用して、構造計算作業を終了させていました。
 このように、構造設計者は「梁・柱接合部の検討」が行われていない偽装された構造計算書を建築確認申請書に添付して来たのです。
 一方、建築確認を審査する全国の確認審査機関(行政機関)にしても、それらに対する専門知識を持ち合わせていないが為に、そのことに対して疑念を抱かず、指摘する事も無く、「適法と判断」し、確認済証を交付していました。まさに、「梁・柱接合部の検討」は、構造上重要な項目であるにもかかわらず、長年に亙って無視され続けた完全なブラックボックス状態だったのです。
 代表的な事例をいつくか挙げます。もしこの事実に異論を唱える技術者や行政関係者がいるのであれば、私がその不正を立証します。

(※1)平成19 年の改正建築基準法施行以前より、日本建築学会・鉄筋コンクリート規準に、「梁・柱接合部の検討」の項目等が、明記されています。

(つづく)

▼関連リンク
・耐力偽装、建築界に蔓延か?部材や鉄筋量を減らす操作~元・一級建築士からの警告
・部材や鉄筋量を減らす耐力偽装、警告の元・一級建築士に聞く(前)

 
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