流通業界の行く末――流通記者対談(中)
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流通コンサルタント 神戸 彲 氏
流通ライター 宗像 三郎 氏全国各地で流通企業、スーパーマーケット企業の淘汰、再編が進行している。九州で先日起こった熊本地震が、再編を加速させる方向に影響することも予想される。勢力図は今後、どのような形になっていくのか。寿屋出店で(株)ハイマートの代表取締役社長を務めるなど、スーパー業界に長年携わってきた神戸彲氏と九州流通業界に精通するライター・宗像三郎氏の対談を開いた。
――なるほど。そうして再編は免れえない。九州ではイオンやイズミが2強としてスーパー再編の中心にいます。一方で、第三極が台頭しようとする動きもある。地方のスーパーが連携して独自の経営統合を果たし存在感を示している例として、北海道・東北のアークスがあります。どのように見ていますか。
宗像 アークスは札幌に本社を構え、東北北部3県で海峡を挟んで食品スーパーの広域的店舗展開をしている。その手法は、ホールディングスカンパニーをつくり各スーパーがその傘下に入るというもの。純粋持株会社のアークスは、親会社としてグループ全体の戦略を決定し、経営資源の適切な配分や、傘下の事業会社に対して管理や指導を行う。傘下のスーパーは、アークスが策定した全体戦略に基づいて事業を展開する。
イオンとイズミ一色になるのを避けようとするなかで、地方のスーパーが生き残っていくベンチマークになっているのがアークスだ。九州、山口でもこれを一つのモデルとして生き残る道を模索する動きが起きている。その一つがリテールパートナーズ。1つのSM連合をつくって大手に対抗する。神戸さんはアークスの横山清さんにお会いされていますが、アークスとはその会社独自のシステムで成立しているものなのか、横山という個人的な人格に支えられた会社なのか。神戸 オーナー経営者たちが危機感を抱いているなかで、誰が指揮をとってまとめあげるか、といったときに重要になるのはやっぱり人格です。横山さんの人となりが連合体をつくった。息子さんは全く別の仕事をされていて、横山さんには個人的なつながりのある経営者がいない。いろんな考え方ややり方の違いを飲み込んで、みんなでやっていきたいとおっしゃっていた。
宗像 本部集中型と地域分権型、これは流通業の永遠の課題です。ダイエーはアメリカのチェーンストアシステムに影響を受け、本部集中を貫いたがそれがうまくいかなかったとみていますが、アークスはどうなっていますか。アークスは「八ヶ岳連峰経営」というスローガンに集約されるように、分権型だ。
神戸 アメリカはライフスタイルがシンプルな一方、日本は地域ごとに色があって多様ですからね。その地域の特色にあった工夫が必要な状況で、いろんな知恵や成功事例が集まってくるアークスの連邦経営は強い。連峰経営は各企業が独立して責任をもち、それぞれの方向性で進む。
(つづく)
【吉井 陸人】<プロフィール>
神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年生まれ。宮崎県出身。74年に寿屋入社。えじまやの社長、ハローの専務を経て2003年にハローデイに入社。取締役、常務を経て10年に(株)ハイマート(現・(株)フードウェイ)の顧問に就任。同年に同社の代表取締役に就任し、翌年健康上の理由で退任。<プロフィール>
宗像 三郎(むなかた・さぶろう)
1950年生まれ。福岡県出身。気鋭の流通ライターとして、九州流通業界の原稿を中心に執筆。
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