天才投資家ジョージ・ソロスと冒険投資家ジム・ロジャーズの中国分析から何を学ぶか(3)
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国際政治経済学者 浜田 和幸 氏
加えて、ソロスは、メディアの使い方が天才的だ。自らの情報に内外のメディアが飛びつくような極秘情報をちりばめる手法には、世界のジャーナリストたちもついつい乗せられてしまう。ロシアによる力ずくのクリミア併合や東部地区への軍事進攻により危機的な状況に直面するウクライナの内部情報を織り交ぜながら、「新生ウクライナを救え」と題するキャンペーンを展開。すると、「ニューヨーク・タイムズ」はじめ影響力のあるメディアも民主主義を標榜する立場上、こぞって転載せざるを得ないというわけだ。
とくに注目すべきは、ドルに代わる国際決済通貨として、人民元の可能性を国際的に宣伝し、世界銀行やIMFを巧みに動かし、ウクライナへの投資を加速させている点である。過去平均100倍のリターンを手にしてきたソロスならではの、新たな国際政治の混乱を逆手にとるという手法がどこまで成功するものか。注視する価値がある。
これまで、ソロス財団は「民主主義を広める」という謳い文句の下、多額の資金援助をテコに、途上国における政治的コネクションを培ってきた。たとえば、セネガルやコンゴの大統領を次々と籠絡し、自在に操ったうえ、これら途上国が保有する石油、金、ダイヤモンドなどの採掘権を入手。と同時に、農業やインフラ整備事業にも深く食い込んでいる。
また、ソロスはゴールドマン・サックスとも連携し、日本のアベノミクスにも深く関わるようになっている。日本銀行を通じて金融緩和という名の大量の資金を市場に投入することで、年率2%のインフレを実現しようとする安倍総理にとって、ソロスのアドバイスは極めて心強いものとなっているようだ。
と同時に、政権与党や東京都からの内部情報も確保する政治家ルートを確保しているのも、ソロスならではの強みであろう。具体的には、イシン・ホテルズと呼ばれるホールディング・カンパニーの下で経営不振に陥ったホテルを買い取り、イノベーションを施し、再ブランド化を図ったうえで、中国やアラブ諸国の投資家に高く転売し、大きな利益を上げている。いずれにせよ、天才投資家ソロスにとって安倍総理は、動かし甲斐のある政治家と映っているようだ。かつてソロスは、自らを「一種の神ではないかと思ったことがある」と告白。それほど強烈な自己愛にもつながる自信があってこそ、大英銀行を跪かせるほどの金融プレーで勝利し、その後も世界の金融マップを塗り替えるほどの技を発揮しているから、見上げたものだ。安倍総理の元にも、さまざまなソロス情報が届けられているという。
(つづく)
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。
今年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見〜「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。関連キーワード
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