天才投資家ジョージ・ソロスと冒険投資家ジム・ロジャーズの中国分析から何を学ぶか(5)
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国際政治経済学者 浜田 和幸 氏
では、アメリカの将来はどうだろうか。ロジャーズに言わせれば、「アメリカに肩入れするのは愚か」ということになる。なぜか――。答えは明確だ。
「日本は、世界最大の債権国です。アメリカはその反対で、世界最悪の債務国、いわゆる経済破綻同然の借金まみれ。日本政府がアメリカ国債を律儀に買い入れていますが、完全に間違っています。ドルを買い支えたり、アメリカ国債を買い増したりするくらいなら、中国に投資すべきです。日本は中国経済の発展や調整の過程で、大儲けできるチャンスがいくらでもあります。実に恵まれたポジションにいます。中国脅威論や中国崩壊シナリオをもっともらしく唱える人々もいますが、中国に行ってみてください。そんな時代遅れの見方は氷解するでしょう」。
アメリカの限界を見据えている点では、ソロスと相通じるものがある。とはいえ、米中の対立が第3次世界大戦に発展する可能性については、ロジャーズは即座に否定した。
曰く、「中国人は賢いですよ。アメリカと事を構えるようなバカなことはしないでしょう。少なくとも今後20年程度はね。これまで1人っ子政策を続けてきたため、戦争ができない国になっているからです。何しろ、どの家も基本的には子どもは1人だけ。大事な1人息子を海外の戦場に送るようなことになれば、それこそ革命が起こります」。「自分が何をしようとしているのか、わからないときには、何もするな」。これがロジャーズのアドバイスだ。これはソロスにも共通すること。ソロス曰く「成功するには気分転換が欠かせない。何もしない時間も貴重だ。忍耐力を養うことになる」。
それでは英気を養った後、市場を理解するためには何をすればいいのか。自分や家族、そして会社や組織を守るのはどうすればいいのか。ソロスとロジャーズが口をそろえるのは、「読むこと」の重要性である。もちろん情報収集と称して単に本やネットを漁るということではない。「集中力をもって情報源と向き合うことが大事」ということだ。
勝負をかけようとする、狙った世界で定評のある文献は当然だが、同時にマーケットに影響を与える一般読者がよく目を通すメディアのチェックも重要となる。こうした情報収集と分析を重ねていくと、あるトレンドが浮かび上がる。そこを押さえたうえで、そうしたトレンドの牽引車となる経営者や研究者を訪ね、自分の五感で、投資に値するかどうかの最終判断を下すというのである。
現在、ソロスもロジャーズも日本や中国の将来に熱い関心を寄せ、情報の収集と分析に日夜、集中的に取り組んでいる。実際、ソロスもロジャーズも頻繁に我が国を訪問し、さまざまな人的コネクションを積み重ねているようだ。余談だが、ソロスには親しい日本人女性が連れ添い、ロジャーズは歌舞伎町が大のお気に入り。我々日本人も安閑としているわけにはいかない。世界を知る努力が未来を創造する切り札になる。混乱はチャンスである。ましてや戦争や大災害は、千載一遇の大勝負の場となるだろう。
ソロスの言うように、動乱期こそ投資の機会は増えるに違いない。たしかにその通りであろう。しかし、ソロスやロジャーズに限らず、マネーゲームのプレイヤーたちは、現場を知り、メディアを操り、こうした混乱を意図的に仕掛けるプロであることを忘れてはいけない。我々には常に反対意見や多様な情報に接し、彼らの餌食にならない冷静な判断力を養うことが求められている。それこそが、日本人のサバイバルにつながるはずだ。また、そうした発想から、日本発のニュービジネスも生まれるに違いない。
(了)
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。
今年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見〜「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。関連キーワード
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