【クローズアップ】2年連続ホワイト企業認定取得 人を生かす環境が組織の成長を支える

税理士法人アップパートナーズ

 西日本最大級の士業グループである(税)アップパートナーズは、福岡の税理士事務所としては初の「ホワイト企業認定」を2年連続で取得した。取得した背景や社内改革の取り組み、そして今後の展望を取材した。

自社を見つめ直す契機 ホワイト企業再認定

菅拓摩代表
菅拓摩代表

    (税)アップパートナーズ(以下、同社)を中核とするアップパートナーズグループ(以下、同グループ)は、税理士法人、社会保険労務士法人、司法書士法人、行政書士法人、コンサルティング会社などを展開する複合型の専門家グループである。西日本最大級の規模を誇り、2025年7月時点で顧問先は約2,900社、従業員数は364名にのぼる。税理士13名、社労士8名など多くの有資格者が在籍しており、税務・労務・法務を横断する経営課題に対し、グループ内でワンストップの対応ができる体制を強みとしている。24年度にはグループ全体で売上高30億円、税理士法人単体でも売上高18億円を達成した。

 同社は今年5月に「ホワイト企業認定」を2年連続で取得し、制度上の「シルバーランク」に該当する評価を得ている。このホワイト企業認定とは、(一財)日本次世代企業普及機構が運営する認定制度である。同財団はホワイト企業を「ブラック企業」と対置した意味ではなく、「家族に入社を勧めたい」「次世代に残していきたい」と思われる企業であることを基準として認定している。審査は7つの分野に分かれた計70項目で構成され、業績・生産性に加え、柔軟な働き方、健康経営、人材育成、多様性、リスクマネジメント、労働法令の遵守といった多角的な視点から総合的に評価される。認定は1年ごとの更新制であり、形だけの制度対応では継続できない。

 今回、2年連続での認定を受けて同グループ代表の菅拓摩氏は「常に働き方の見直しは行っていたが、認定取得を契機に、その条件の厳格さが自社の現在地を見つめ直すきっかけになった」と振り返る。

社員の声と向き合い 働きやすい組織づくりへ

 認定取得に挑戦するきっかけとなったのは、コロナ禍における多くの休職・離職だった。出産や介護、家庭事情による休職・退職などが重なった一方で、顧問先は増加の一途をたどり、人員の確保が急務となった。さらに、小規模な税理士事務所では対応しきれないような専門性の高い案件も増え、同グループに相談が寄せられる機会も多くなっていた。

 こうした状況を受け、経営陣は採用力の強化と、対外的に社内制度のPRを図るべく、ホワイト企業認定への挑戦を決めた。認定に際しては、形式的に制度を設けるだけでは評価されず、就業規則や実際の運用実績、社員アンケートの結果といった制度の実効性を問う根拠資料の提出が求められる。アンケート結果は、人材の多様性や働きがい、柔軟な働き方といった観点について、制度の運用が実際に成果を上げているかを確認する重要な証拠として利用される。

 同社でも認定取得を機に、匿名による社員アンケートを実施したところ、スタッフからは率直な意見が多数寄せられた。その結果、残業が少ないオフィスほど満足度が高いといった具体的な傾向が明らかになった。菅代表は「スタッフの具体的な要望や、考えを知るきっかけになった」と語る。

制度が支える成長を促す企業風土

税理士法人アップパートナーズ    菅代表は理想とする組織像について、「企業とスタッフが対等な関係であること」と答える。その価値観が反映するために同社は、年功序列的な構造ではなく、成果や能力に応じた処遇を重視している。たとえば、同社では営業利益の30%を決算賞与としてスタッフに支給している。ただし、これは個人の成果だけでなく、会社全体の業績に連動した報酬体系であり、社員1人ひとりが会社の業績を「自分ごと」として捉えられるようになっている。

 また、対等な関係には、企業が社員の人生すべてに責任を負うのではなく、互いに成果と責任を共有するという立場が前提となる。会社側には評価制度や給与交渉の透明性が、社員には組織に対する誠実さが求められる。そうでない社員は自然と淘汰されていく。一方で、同社は他社を経験したうえで「やはりアップパートナーズが良かった」として戻ってくる“出戻り社員”も多いという。これは制度や待遇だけでなく、文化としての「働きやすさ」が組織に根付いている証でもある。

 そのうえで、成果を求める組織であるからこそ、「心理的安全性」の確保も不可欠だ。心理的安全性とは、自分の意見や気持ちを安心して表現できる状態を指し、ビジネスシーンでは、たとえ意見が対立したとしても、人間関係が損なわれたり、相手から否定されたりすることなく発言できるという信頼感を意味する。同社では、社員が心理的安全性を確保できるように、チーム制の導入や1on1面談といった仕組みを通じて、職位関係なく安心して意見を述べられる環境づくりに取り組んでいる。こうした風土が、組織の継続的な改善と挑戦を支える力となっている。

 同社は博多を本社として計7拠点あり、2027年には創業50周年を迎える。その節目に向けて、10拠点・450名体制の構築とともに、グループ売上高40億円を目標として掲げている。これからの時代、中核事業である税理士法人としての専門性を発揮し続けるためには、支える「人」と「組織」をいかに育て、磨き上げていくかが問われる。同グループはこれからも、クライアントの要望に応えることを第一に据えながら、社員の満足度を高めることで、必要とされる場面に的確に応えられる人員体制と、1人ひとりのスキル向上を支えていく。

【岩本願】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:菅拓摩
所在地:福岡市博多区博多駅東2-6-1
設 立:2006年9月
資本金:6,600万円
売上高:約30億円(グループ合計)