2024年11月26日( 火 )

期待が寄せられている成長因子とは?(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 それでは成長因子は、今後、どのような分野に活用されるだろうか――。

 まず、アンチエイジングに期待が高まっている。成長因子のなかで「EGF」は、皮膚再生に影響を与える。そのため、皮膚に“ハリ”を与えたり、ほうれい線をなくしたり、シワを伸ばす効果が期待されている。
 もう1つ、成長因子に期待されているのは、火傷、床ずれなどの治療薬としての効果である。日本の科研という会社では、すでに成長因子を活用した床ずれの治療薬を出しているが、今まで治療薬がなかっただけにかなり好評である。

hito_usiro それから成長因子は、発毛にも効果があることが立証されている。発毛させるためには、毛母細胞を刺激して大きくすることと、毛の成長を持続させること、この2点が求められる。最近の学会の論文で、FGFの一種類である 「FGF9」は、毛母細胞を刺激することが明らかになった。発毛剤も新しいステージに入り、成長因子を活用した発毛剤がトレンドになってくるだろう。

 最後に、韓国にはこの成長因子の開発・生産に特化した企業があり、世界的な注目を受けている。会社名は「株式会社P&Pバイオファーム」という会社であるが、この会社の設立者である申ハンチョル先生は、豪州のシドニー大学で修士号および博士号を取得した後、化学分野では世界で最も権威のあるスクリプス研究所で研究をされた、タンパク質の合成および効率的な生産において世界的な権威者である。
 申先生は会社設立以来、23個の成長因子の開発に成功していて、この成長因子を活用したビジネスに乗り出している。この成長因子を目当てに、韓国の有名大手製薬会社からの製品開発の提案や共同研究の依頼が相次いでいる。

 既存のタンパク質の生産方法では、どうしても成長因子の活性度と安定度が低く、2週間も経過すると、活性度が100から20に落ちてしまう限界が存在していた。
 P&Pバイオファーム社では、この問題を見事に改善し、時間が経過しても安定度が落ちない成長因子の開発に成功している。この結果、成長因子の効果の面でも、既存のEGFなどに比べて3倍以上の効果が確認されている。
 とくに、今後、高齢化が進むなかで、床ずれなどの治療薬市場は、大きく成長することが予想されている。申先生は日本の製薬会社と組んで、この分野の治療剤を開発することで、世界一を目指したいという夢を持っている。新薬の開発には数年の歳月がかかるため、シワ改善の化粧品を開発し、2012年から品川美容外科に納品している。それから、先月には成長因子6種類を配合した新しいコンセプトの発毛剤を出荷し、まずは発毛剤で成長因子の効果を立証したいとの抱負を抱いている。

 成長因子が期待を寄せられているだけに、この企業の動向から目が離せない。

(了)

 
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