仲盛氏が1級免許取り消し処分停止を申し立て
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協同組合建築構造調査機構代表理事の仲盛昭二氏は9月12日までに、国土交通相が同氏の作成した構造計算書に「不正な操作」があったとして一級建築士免許を取り消した処分の執行停止を求めて、福岡高等裁判所に申し立てた。同氏の代理人弁護士が9月8日、同高裁に申立書を郵送で提出した。申立書は、国が仲盛氏の「不正な操作」を示すために作成した推測計算書の全文が明らかにされていないなど、「不正な操作」を直接基礎づける証拠が存在しない、と主張しており、国の処分の根拠が問われることになる。
国は2013年9月4日、仲盛氏が2000年~02年にかけて作成した14件の建物の構造計算書の入力データと出力データが整合しないのは意図的で不正な操作をして不適切な設計をしたもので、「不誠実行為」に該当すると判断し、同氏の一級建築士免許取り消し処分を行った。同氏が同年9月9月、同処分の取り消しを求める訴えと執行停止を求める申し立てを福岡地裁に提起したところ、福岡地裁は同年11月、仲盛氏の主張を認めて第一審判決の言い渡しまで免許取り消し処分の執行停止を決定した。同地裁は2016年6月の判決で仲盛氏の訴えを棄却し、同氏が判決を不服として控訴していた。
今回の執行停止申し立ては、不整合の原因が「不正な操作にあるとはいえない」ことや「処分ランク評価に裁量の逸脱濫用がある」ことなどをあげて、「免許取り消し処分が裁量の逸脱濫用した違法なもの」と指摘し、「第一審判決の内容を踏まえても執行停止の要件を満たす」と主張している。
問題の推測計算書は、処分後の日付で作成されたもので、国はその一部しか明らかにしていない。仲盛氏が再三にわたって、構造計算書や推測計算書の全文の提出を要求したが、国から提出されなかった。申立書は、構造計算書の作成過程という専門的な判断過程を検討するためには、処分の根拠資料すべてが提出されなければならないと指摘している。仲盛氏は、「処分の後に、処分の根拠の推測計算書が、後付けで作成されたことから(処分と一審判決に対し)到底納得できない。そのような時系列的に明らかに辻褄合わせと考えられる手法により作成された推測計算書なるものが、厳粛で公正な裁判資料として提出されること自体、はなはだ不適切なもの」「処分の根拠を正当化するために、都合のいいように作成された計算書という『不誠実な根拠』に基づく処分は、審理以前の『国の不誠実行為』そのもの」と批判する。
申し立てにあたって、仲盛氏は、「私個人の一番の目的は、建物の安全性の客観的な確認だった」として、「対象となった14件の建物について、各行政庁および国による検証の結果、建築構造の安全性において、まったく問題がないことが確認されたことにより、建築士としての責任は果たせたものと安堵している」と表明している。
「安全が確認されたのに、曖昧な『不誠実』の概念を持って、一級建築士免許の剥奪という極刑が与えられた事実に対し、長年真剣に構造設計業務に携わってきた者として危機感を感じており、今後の建築業界の健全な発展のためにも、一石を投じたい」と、心境を語っている。【山本 弘之】
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