G20開催に秘められた中国とロシアの狙い(2)
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国際政治経済学者 浜田 和幸 氏
中国は、過去30年にわたり、外国からの直接投資や輸出攻勢によって、急成長を遂げ、世界のどの国よりも経済のグローバル化の恩恵を受けてきた。2015年のデータによれば、今や中国は世界経済の成長にとって25%以上の影響を行使するまでになっている。16年の1月~7月のデータを見ても、中国の対外的な投資金額は前年比で62%も増加し、過去最大の1,000億ドルに達しているほどだ。
こうした流れを一層加速させるために、中国はG20の機会にBRICSをはじめ、アフリカや中南米の途上国の代表を多数中国に招いているのである。中国の戦略は、こうした発展途上国を味方につけ、国際的な通商ルールを中国主導の下で進めようとするもの。BRICSを舞台とし、中国が国際関係の新たな哲学と方向性を模索していることは疑いようがない。
その意味でも、杭州で開かれたG20の会合では、あらゆる準備が念入りな計算の上に施されていた。例えば、首脳会議のテーブルがそうであった。明の時代を彷彿とさせる豪華な椅子に、柔らかいクッション、そして明るい緑色の翡翠を散りばめたペーパー・スクロール。茶器や筆置きはもとより、中国の歴史的文化をふんだんに散りばめたお膳立てが用意されていたものである。夕食会のメニューも食器も皇帝風であった。
また、公式の記念写真の撮影の際の並び順にも習近平国家主席の並々ならぬ思いが反映されていた。両脇を固めたのは、昨年のホスト国であったトルコのエルドガン大統領と、来年のホスト国のドイツのメルケル首相であった。そしてロシアのプーチン大統領とアメリカのオバマ大統領を、ちょうど左右対称の位置に立たせた。その向こうにはBRICSの主要メンバーである、インドのモディ首相とブラジルのテメル新大統領を配置するという気の配りようであった。日本の安倍総理は、第1列目の一番端に位置し、2列目にはイタリアとイギリスの首相を立たせた。実に巧妙な立ち位置と言えるだろう。
しかも舞台となった杭州は、現在、習近平国家主席が最も力を入れて推進している「新たなシルクロード計画」、別名「一帯一路」と歴史的につながりの深い土地柄。更に言えば、習主席がかつて省の責任者を務めた場所でもあった。こうした背景も杭州が開催地に選ばれた理由であろう。
いずれにせよ、内外に向けて中国が世界と一体化するという考えを持っていることを訴える意味が巧みに込められていたことは間違いない。アジア太平洋地域はもちろん、アジアとヨーロッパを、中国を通して一体化させていくという遠大な構想を打ち上げたわけだ。
と同時に、杭州での会合に先立ち、G20の財務大臣・中央銀行総裁会合が成都で開かれた。ここでは主に、グローバルなインフラ整備のあり方が議論され、中国が提唱するインフラ整備計画には、3兆2,600億ドルの投資が想定されることが明らかになった。中国はこうしたインフラ整備計画を周辺国との経済関係強化に生かそうと取り組んでいる。具体的には、パキスタンとの間で進む高速道路網。タイとの間で建設が合意された鉄道網。また、工事の着工が遅れ気味ではあるが、インドネシアのジャカルタとバンドンを結ぶ高速鉄道網などが象徴的なプロジェクトとして内外にアピールされている。
(つづく)
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。
今年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見〜「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。関連キーワード
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