2024年11月26日( 火 )

幹細胞コスメの真実(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 近年、再生医療に大きな関心が寄せられている。とくに日本では、2012年に京都大学の山中伸弥教授がノーベル賞を受賞して以来、再生医療に一層関心が高まっている。
 再生医療を語るときに、いつも登場するのは、「幹細胞」という言葉である。今回は幹細胞のなかでも、幹細胞の皮膚再生の機能を活用した「幹細胞コスメ」の問題を取り上げてみよう。

 それでは、本題に入る前に、幹細胞について簡単に整理をしておこう。

te 人間の体は、ご承知の通り、さまざまな細胞で構成されており、その数は60兆個と言われている。いろいろな細胞の働きに支えられ、私たちの生命は維持できている。
 ところが、細胞には寿命があり、古い細胞は死に、新しい細胞が生まれることで、私たちの体は保たれている。すなわち新たな細胞が誕生してから老化し、それから死亡するというサイクルが常に行われているわけだ。
 細胞にもいろいろな種類があるが、そのなかで幹細胞は細胞をつくる細胞であり、“細胞の供給源”の役割を担っている。幹細胞は同じ細胞を複製することも可能だし、別の細胞をつくることもできる。つまり幹細胞がなぜ大切かというと、幹細胞の機能なしには、私たちは正常な生命活動が維持できなくなるからだ。たとえば、怪我をしたとしよう。ダメージを受けた細胞は、新しい細胞に交替されないといけないが、新しい細胞を供給する役割を担うのが幹細胞である。
 その幹細胞の種類には、どんな細胞にもなれる「胚性幹細胞」と、一定の細胞にしかなれない「成体幹細胞」がある。

 韓国では、2000年度の初めから幹細胞の可能性に目をつけ、盛んに研究を行ってきた。他国に先駆けて研究が重ねられ、論文もかなり発表されるようになった。一時期、韓国はこの分野で世界をリードするのではないかという夢もあったが、だが論文の捏造などのスキャンダルが起こり、幹細胞研究に空白期間が発生する。しかし、その後も幹細胞の研究はベンチャー企業を中心に進み、幹細胞はまず化粧品などでの応用が進んでいる。

 「幹細胞コスメ」が最初に誕生したのは、フランスである。07年、フランスの化粧品会社は、ヒト幹細胞から抽出した成分を使った「アマトキン」を出荷した。それが幹細胞コスメのスタートである。
 「アマトキン」はもともと火傷を治療するために開発された治療薬であったが、その火傷を治療するメカニズムが化粧品の原料としても有効ではないかと思われ、その効果を検証した結果、立証され、化粧品にも活用されるようになった。08年、フランスのディオールやランコムなどのグローバル化粧品メーカーも、幹細胞コスメの可能性は大きいと判断して、このトレンドに追従した。その結果、韓国でもアモーレパシフィック、LG生活健康などの化粧品大手も、このトレンドに合流している。

 このように化粧品は、これまでのようにシミなどを隠したり、きれいに見えるようにするといった目的から、皮膚を再生する目的へとジャンプしようとしている。

(つづく)

 
(後)

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