海外でも活躍する日本庭園づくりの匠(後)
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(株)別府梢風園
モナコやフランスで日本庭園づくり
そんな同社が強みとしているのは、海外での展開だ。その代表作と言えるのが、モナコ公国で手がけた欧州初の日本庭園「モナコ公国日本庭園」である。1994年に竣工したこの日本庭園は、「庭園のなかに入ると日本にいると錯覚させる」ように、国際会議場などの近代的な建物を植栽で隠すなどの工夫を施し、モナコ政府から「ヨーロッパ最大級の日本庭園」との賛辞を得るほどの出来映え。14年に20周年を迎えたことを記念し、長い友好関係への感謝の気持ちを示すために、庭園内の茶室と野点で茶会を開催。庭園には管理のためのスタッフやガードマンが常駐するほか、同社のスタッフも年に2、3回訪れるなどして、徹底した維持管理がなされている。同庭園が欧州随一と言われる所以だ。さらに、この庭園内に今後、茶室の増築に加え、正座しなくともよい新たなタイプの茶室をつくる計画も進んでいる。その目的は、いかに多くの人に茶室を使ってもらい、お茶そのものを楽しんでもらうか。たとえ形は変われども、根底に流れる精神は一緒だ。
また、このモナコ公国日本庭園20周年記念の茶会で、在フランス日本大使館から同社に連絡が入った。フランスに外交の場として日本庭園をつくる計画があるので、ぜひ依頼したいとのことだった。さっそく現地調査を行い、15年6月から起工。場所はパリから車で30分ほどの地点、ラ・セル=サン=クルー市外にあるラ・セル城内。その昔、王侯貴族の迎賓館的な所で、今は外務省が管轄している。ヨーロッパのフランス庭園は、左右対称性や幾何学性、噴水や池、植栽の人工的な整形を特徴としていて、ビジュアル的なものだ。それに比べて日本の庭園は、大陸からの宗教や思想が反映され精神的な要素が強い。今回のフランスでの日本庭園は枯山水での造園。枯山水は、水のない庭のことで、池や遣水などの水を用いず、小石や白砂などによって山水の風景を表現する抽象的な庭園様式だ。この15年10月に完成を迎え、外交や社交の場として利用されている。
業界の良さを伝え若手の育成を
ただ、業界としては職人不足という課題も抱えている。また、京都などと比べて神社仏閣が少ない福岡の地では、伝統に沿った日本庭園をつくる職人が育ちにくいという環境にもある。(一社)福岡市造園建設業協会の会長も務める別府氏は、「今後は、職人の教育に力を入れていきたいと思っています。1人が1つの職務だけを受け持つのではなく、多能工化で、1人で複数の業務を受け持てるような職人を、業界としても育てていかなければなりません」と語る。
もちろん同社でも、職人の育成には力を注いでいる。5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)といった基本的な部分から、安全面や技術面など、仕事に関するあらゆる部分について、先輩から後輩へときちんと継承される体制を取っている。
「我々の仕事は、建設業界のなかでは唯一植物を扱います。また、仕事の領域のなかで創作ができる業界でもあります。そのため、植物が好きな方や、また伝統的な日本文化に興味のある方、ほかに芸術的な感性のある方などに向いているかもしれません。そうした若い方々に、ぜひ門戸を叩いてほしいですね」と別府氏。
業界としても、同社としても、そうした新たな若い力の加入を待ち望んでいる。
(了)
<COMPANY INFORMATION>
代 表:別府 壽信
所在地:福岡市東区青葉1-6-53
設 立:1976年6月
資本金:8,500万円
TEL:092-691-0678
URL:http://www.shoufuen.co.jp<プロフィール>
別府 壽信
1955年、福岡県生まれ。西日本短期大学造園学科卒業後、76年に(株)別府梢風園に入社。85年に同社代表取締役社長に就任した。(一社)福岡市造園建設業協会の会長も務める。趣味は、読書、ゴルフ。法人名
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