テレビ放送のネット同時配信、NHKがほくそ笑む理由
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総務省は、かねてから検討を進めていたテレビ放送のネット同時配信を2019年にも全面的に解禁する。NHKのネット同時配信は放送法によって制限されているが、この放送法を改正。同時に民放にも参加を促すとしている。近年家庭のインターネット回線が高速化し、またスマートフォンが普及することで映像を配信するためのネットインフラが充実してきている現在、この動きは視聴者としては歓迎したいところだ。
しかし、気にかかるのが一方の当事者であるNHKの熱烈な歓迎ぶり。というのも、最近増えている「テレビ受像機を持たず、NHKの受信料を払わない」という家庭からも、受信料を徴収する格好の理由付けになるからだ。実際、総務省は有識者会議でネット同時配信を見られる環境にある視聴者から、受信料を徴収する仕組みを検討するとしている。自宅にテレビがなくてもパソコンやスマートフォンがあれば、受信料をとられてしまうという理屈だ。
ネットやスマートフォンの回線使用料から強制的に徴収することも可能かもしれないが、さすがに反発の声は高くなるはず。すでにNHKアーカイブスで行われているような、「ひと番組いくら」で番組視聴の権利を購入する形に着地するのが現実的な線だろうか。
すでにラジオは、民放による「radiko」と、NHKの「NHKネットラジオ らじる★らじる」がネットによる同時配信を行っている。これらは地理的に聴取が難しい地域への対策として始まり、無料で提供されている。radikoは月額350円(税別)を支払ってプレミアム会員になると、全国のラジオを自由に聞くことができる。
受信料徴収にまい進する姿勢を隠さないNHKだが、そもそも公共放送として全国くまなく放送を届けるというのがNHKの本務だったはず。かつて東日本大震災の際に、ある中学生が「避難所などでテレビがない人のために」と無断でNHKの放送をネット配信したことがあった。明らかに著作権を侵害した行為だが、NHK側はあえてこれを許諾。NHK側がネット配信を開始するまで配信を継続させた、という出来事があった。これも、テレビ放送には高い公共性がある、とNHK自身が認識していたからだろう。
有識者会議では、視聴者にとって利便性が高まる仕組みを、集金のための仕組みに貶めてはならない。有益な議論がなされることを望みたい。
【深水 央】
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