聞いて呆れる「子育て支援」~公費投入50億円 鹿児島・松陽台県営住宅への疑問(3)
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真っ暗な道。なかなか見えてこない目的地。人通りはなく、同じような光景ばかりが続く――。JR鹿児島本線「上伊集院駅」から40~50段もの階段を上り、高台に上がったところにある松陽台町。傾斜の多い住宅街のなかを進み、一番奥まった場所にあるのが県営松陽台第二団地だ。子どもたちの気持ちになって、何度も団地と駅を往復してみた。
“子育て支援”を目的につくられた、鹿児島市松陽台の県営松陽台第二団地。高台に位置する県営住宅から最寄り駅であるJR鹿児島本線「上伊集院駅」までは、大人の足で徒歩15分。階段や坂道が多く、子どもの足だとさらに時間を要するはずだ。
県営住宅から一番近い小学校は、ひとつ先の薩摩松元駅近くにある松元小学校。松陽台には、子育てに必須の保育園も、小・中学校もない。松陽台から同校に通う児童たちは、毎朝駅までの長い距離を歩き、通勤・通学客でごった返す列車に乗って通学している。
上伊集院駅は、松陽台にある「松陽高校」の最寄り駅。朝、ホームは列車から降りる高校生と乗り込もうとする小学生で混雑し、危険極まりない。ホームの柱に黄色い防護が施されているのは、児童の事故防止が目的なのだという(写真参照)。
一方、乗降客が少ない薩摩松元駅は無人駅。危険であることに変わりはない。過去には、児童の下校時に同駅ホームで転落事故が起きていたこともわかっている。冬の帰り道、上伊集院駅から県営住宅までは、冒頭に記した暗い道を歩まねばならない。
鹿児島県が作成した県営松陽台第二団地の募集案内には、次のように記されている。
≪子育てのしやすさ,子どもの安心・安全に配慮した,子育て世帯の支援を目的に建設される県営住宅です。≫
保育園、幼稚園、小学校、中学校――。子育てには欠かせない施設が一つもない地域が、「子育てのしやすい」環境なのか?子どもたちに、暗い夜道を何十分も歩くことを強いる公営住宅が、「子どもの安心・安全に配慮」した結果だと言えるのか?50億円もの公費を投入した県営松陽台第二団地は、計画そのものが歪んでいたとしか言いようがない。
(つづく)
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