立憲・堤かなめ議員、国政経験を生かして福岡県大野城市長選立候補へ

堤かなめ氏
堤かなめ氏

    来月31日告示の福岡県大野城市長選(9月7日投開票)に、立憲民主党の堤かなめ衆議院議員が立候補する意向を固めたことがわかった。

 堤氏は現在、2期目。国際電信電話(現・KDDI)勤務や九州女子大学教授などを経て、2011年の県議選で民主党の公認で初当選。19年の県議選では立憲公認で当選した。その後、21年の衆院選で福岡5区から同党公認で初当選した。

 2000年にNPO法人「福岡ジェンダー研究所」を設立するなど、一貫してリベラル系の立場に立ち、人権や男女平等の政策実現に取り組んだ。

 大野城市では、副市長によるハラスメント問題が大きな課題となっている。今年3月には、昨年までの5年間で延べ60人の職員が休職していたことなどが、同市の第三者調査委員会によって明らかにされた。また、副市長など市の幹部によるパワハラがあったとする調査報告書も公表されている。

 堤氏の政治信条は「ジェンダー平等を通して社会改革を進める」ことだ。今回の立候補の決断を後押ししたのは、こうした市政の現状への強い危機感があることは間違いない。

 経歴をみると、太宰府市の出身で、小学4年のときに大野城市の学校に転校。中学・高校はバスケットボール部で仲間とともに汗を流したという。転機は国際電信電話(現・KDDI)に務めたことで、男性中心の在り方に疑問をもった。そこで「リスキリング(学びなおし)」を目指し、九州大学の聴講生を経て、九州大学大学院文学研究科社会学専攻修士課程に入学し、1991年3月、修士課程を修了している。

 女性のキャリア形成に対する社会の理解がまだ高いとはいえなかった時代に、大手企業を辞め、大学での研究職に転じたのは、堤氏の信念が強かったからに他ならないだろう。

 1993年に九州国際大学講師となり、95年にはスウェーデンのカロリンスカ研究所にて客員研究員として勤務。ジェンダー平等や福祉国家に対する考え方は、スウェーデンでの経験が大きいという。

 先月末に閉会した国会では、堤氏が取り組んだ選択的夫婦別姓の実現が今一歩のところで進まなかった。堤氏にとっては心残りの思いもあるのだろう。福岡市内で開かれた立憲の野田国義氏の集会での挨拶でも夫婦別姓に言及していた。

 今回の立候補の動きについて立憲県連関係者は「立候補について何も聞いていない」と語ったが、地元では「故郷への恩返しがしたい」との思いを周囲に語っていたようだ。

 大野城市長選は、現職の井本宗司市長が引退する意向を示しており、前市教育長・伊藤啓二氏が無所属で立候補する考えを表明している。自民党と公明党は伊藤氏に対する推薦をしており、立憲や国民民主党にも推薦願を出しているようだ。

 参院選の真っただなかであるが、すでに現職の後継候補が立候補を表明し、動き出しており、堤氏としては「出遅れるわけにはいかない」との判断なのだろう。

 現職の井本氏は元自民党県議で、県議会議長も務めた。2005年に同市長選に立候補し、当選。5期20年の長期政権となっている。長期政権の弊害は国政も地方も同じである。市民にとって一番身近な行政は基礎自治体の市町村である。堤氏の信念に基づいた決意に期待したい。

【近藤将勝】

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