2024年3月、北陸新幹線の金沢~敦賀間が開業し、敦賀駅が新たな終着駅として加わった。高架構造の新駅舎には木材を用いた内装や観光案内機能が整備され、地域の玄関口としての機能が強化された。筆者はその敦賀駅を訪れたが、同じく開業後に訪問した金沢駅と比べて、駅の規模や人の往来に大きな差があると感じた。
東京から敦賀までの最短所要時間は3時間8分に短縮され、新幹線の1日平均乗車人員は約7,700人、敦賀駅の年間乗降客数は391万4,000人に増加したが、平日昼間の構内は閑散としており、単独では採算確保が難しい印象を受けた。北陸・関西圏を結ぶ結節点としての役割を担う一方、在来線との乗り換えの不便さや商業機能の乏しさが課題であろう。
一方、15年に北陸新幹線の延伸で中核駅となった金沢駅は23年度に1日平均約4万2,300人が乗降し、私鉄などを含む総合利用者数は10万人を超える活況を見せており、北陸経済圏の中心都市として広域的な役割をはたす。北陸鉄道や空港連絡バスなどが集まり、観光やビジネスの玄関口として機能。駅周辺には百貨店やホテル、美術館などが集積し、日常利用から観光まで幅広い需要を取り込んでいる。金沢駅は北陸全体をけん引する拠点であり、敦賀駅との性格の違いが際立っている。
今後の焦点は、敦賀~新大阪間の延伸だ。16年に「小浜・京都ルート」が採用され、ルート上には東小浜、京都、京田辺(松井山手)、新大阪の各駅が設置される見通しとなっている。京都駅付近のルートは「南北案」「桂川案」「東西案」が検討されたが、東西案は地下水への影響が懸念され24年に除外された。京都~新大阪間は、JR片町線沿いを通る「南回り案」が17年に決定している。
国交省の試算によると建設費は最大5.3兆円に上る見通しで、国が3分の2、地方自治体が3分の1を負担する。小浜市が「悲願の実現」と喜ぶ一方、京都市では環境保全や住民理解が課題とされる。着工時期は未定だが、25年度以降の着工、46~50年頃の開業が想定される。関西国際空港への延伸を求める声も上がるなか、北陸新幹線の全通に向けた議論は、地域間のバランスと広域交通の在り方を問う段階に入っている。
【内山義之】