2024年11月29日( 金 )

原発事故処理費21.5兆円、全国民で東電の尻拭い~福岡の声は?

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 経済産業省が12月9日に発表した東京電力福島第1原発の事故処理費21.5兆円の試算。これまでの想定(11兆円)から増えた分は、東電以外も含む大手電力会社の送電線使用料に上乗せするほか、新電力にも一部負担を求めるとしている。この政府の対応を、東電から遠く離れた福岡の電力利用者はどう受け止めているか。市井の声を拾った。

ningen_img 「日本航空(JAL)は巨額の債務超過に陥り、政府の方針で一度破綻したのち再生という過程をたどった。多くの株主が膨大な損失を被り、JALの職員たちもリストラされた。まず、東電を一度破綻させ、今まで原発利益の恩恵を受けてきた株主、社債購入者から負担させるべきではないか」(自営業・50代男性)

 「原発については、国民の間で賛否が分かれていた。その原発を自己責任で推進した企業が破綻せず、全国民にツケを回すのはいかがなものか。東電はあくまで私企業。ある銀行が破綻した際、他行利用者の預金金利が削られて救済資金の一部が捻出されるだろうか。ある電話会社が破綻した際、その救済で、他社利用者の利用料金が値上げされることがあるだろうか。そう考えてみると、東電への対応が異常なものに映ってくる」(元公務員・60代男性)

 「全国民に負担を強いる前に、原発を持つ電力会社が資産売却や給与カットなど、できる限りのリストラを行うべきだ。左うちわの殿様商売を続けながら、負担を国民に強制するのでは筋が通っていない」(会社員・30代男性)

 政治でいう「増税の前に、身を切る改革」が、東電においては、全国民が納得するほど十分に行われていないと受け止められているようだ。その政治(政党)と電力会社の関係性を問題視する声も寄せられた。

 「『疑わしきは罰せず』という言葉もあるが、電力会社とその関連企業については、会社も社員も、政治献金の禁止を義務付けるくらいの措置をとるべきだ。今後、『票とカネの打ち出の小槌』の機能が働かないことを、全国民にわかりやすく示すべきだ」(会社役員・40代男性)

 さらには、「全国民に一企業の尻拭いを求める原子力損害賠償・廃炉等支援機構法は、国民の財産権を不当に侵害する憲法違反の法律である」(前出の元公務員男性)という怒りの声も。強制的な負担となる今回の対応は、事実上の増税に等しい。政府は、事故処理費用対策の優先順位について今一度見直すべきではないだろうか。

【山下 康太】

 

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