カトープレジャーグループ・30年無敗の事業経営者が語る地域再生のカギ（１）

カトープレジャーグループ　代表取締役 兼 CEO 加藤 友康 氏

　九州では、2002年に破綻した公共リゾートを「長崎温泉 やすらぎ伊王島」として再生し、地域の雇用創出、経済の活性化に貢献するほか、インバウンドの富裕層にも好評を博す高級旅館やリゾート施設、意趣を凝らしたレストランなど、幅広く事業を手がけるカトープレジャーグループ。すべての事業で共通しているのは、事業収益まで責任を持つ「トータルプロデュース」の姿勢である。同グループ代表の加藤友康氏に、事業を通じた地域再生をテーマとして話をうかがった。

リスクを背負う意味　成功の答えは現場にある

　――御社では「トータルプロデュース」※として、事業収益まで責任を持つ覚悟を示されていますが、いつ頃からこの手法を取り入れたのでしょうか。

カトープレジャーグループ　代表取締役 兼 CEO 加藤 友康 氏

　加藤友康代表（以下、加藤）　22歳で父親から事業を受け継ぎ、24歳だった1989（昭和64）年に「カトープレジャーグループ」に商号を変更しましたが、その時には、コンセプトや事業戦略の大まかなところはできていました。「トータルプロデュース」という言葉もその頃から使っております。私どもは、サービス業、レジャー事業のなかで、いろいろなものを見て聞いて歩いて、私自身が体験して、さまざまな事業にチャレンジすることで今日がありますが、やはり、成功の答えは現場にしかありません。

　先代である父親が亡くなり、私が社長に就任して事業を継承し、新しいことにもチャレンジを始めたのが87（昭和62）年からです。ちょうどバブルがピークを過ぎ、終わりを迎える頃でした。私が手がけた最初のプロデュースは、当時、「ホテル日航大阪」内にあった高級ディスコでしたが、そこでいろいろな方にお会いしました。「空間プロデューサー」という方が大勢いらっしゃり、そのなかで日本を代表する方にもお目にかかり、夢のあるプランを聞かせていただきましたが、プランニングだけでは、この事業は成功しないと強く思いました。

　勝負のポイントがレストランの外観・内装や海外ブランドなどで、どんなに格好良くても、結局、サービスが悪ければ流行りません。また、依頼を受けて、コンサルティングを行った時期もありましたが、口で伝えたり、マニュアルを作成するだけでは、成功へ導くことにはならないと感じました。自分の言ったことを最後までやり抜くことが、私たちの事業には一番大切だと思いました。そのためには、事業を最初から最後までお任せいただく必要がありました。

　もう1つ、「リスクを背負う」ということを私はよく申し上げています。伊王島（「長崎温泉 やすらぎ伊王島」）では、公設民営方式（当時）で施設を任された際（2003年）、金子原二郎長崎県知事からは「加藤さんは『自分がやってダメなら赤字を背負います』と言っていただいたから信用できた」と仰っていただきました。

　クライアントの方やパートナーの方が、どうしたら嬉しいだろうかと、原理原則を考えた時、これまで上手くいかなかった事業を私どもに任せて、同じパフォーマンスだったらがっかりされると思います。自分がやって10の成果のものを、カトープレジャーグループに任せたら20の成果があがり、そのうえ最低10の補償もしてくれる。さらに利益を得ることができ、カトープレジャーグループも利益を得るというビジネススキームだったら、クライアントさまは喜ぶはずです。

（つづく）
【聞き手・文：山下　康太】

※KPGの独自のシステム「トータルプロデュース」は、（１）マーケティング、（２）コンセプトワーク、（３）プランニング、（４）オペレーションの４段階のすべてを担当し、事業収益まで責任を持つ取り組みをいう。

＜プロフィール＞
加藤　友康
1965年、大阪府出身。ホテル、フードサービス、スパ、ラグジュアリーリゾート、公共リゾート、エンターテインメントなどあらゆるレジャー事業の総合的な開発を行うプロデュース企業、カトープレジャーグループの代表取締役兼CEOを務める。22歳のときに父親の急逝により事業を引き継ぎ、代表取締役に就任。現在、日本全国に事業所を展開し、総スタッフ数約3,500名、年間500万人におよぶ顧客を動員している。代表的な事業として「箱根・翠松園」「Kafuu Resort Fuchaku CONDO・HOTEL」「麺匠の心つくし つるとんたん」などがある。主な著書に、「経営者が欲しい、本当の人材」「世界一楽しい仕事をしよう！KPG METHOD」（ワニブックス）がある。