人事が語る「就職活動に異変?」(4)~従業員へのリスペクトを
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3回に渡り、近年の新卒者の就職活動(以下就活)を、過去の就活の歴史と比較して、新卒者の考え方が変化してきていることを述べてきた。現況の就活のキーワードとしては、『安定・ブランド・ネームバリュー・勤務時間・休暇・人間関係』などが重要視されている。「寸暇を惜しんで早朝から深夜まで働いて、誰よりも稼いで、仕事で認めてもらい、社内で昇格したい」という欲望を持つ次世代の人々の比率は、極めて低くなっている。そして、彼らは自分だけで進路を決めるのではない。“オヤカク”が必要とされ、家族丸抱えであるという認識で、企業の人事担当は対応しなければならなくなっている。
現在の就活を、安易に断罪するのは難しい。近年、過労による事故・事件のニュースが連日絶えず報じられている現代社会。おそらく、氷山の一角であろう。過労以外でも、『パワハラ・モラハラ・マタハラ』など、企業側がその地位を悪用して、雇用者に圧力をかけて心身を追い詰めるケースが多発している。そのようなことに巻き込まれたくないのは、誰しもそうである。このような現実を目の当たりにすれば、人間は守りに入る。就活する人々にも夢があるだろう。将来のビジョンもあるだろう。しかし、夢やビジョンを求めても、一旦会社に入ったら、企業側からの圧力で夢やビジョンが崩れ去る。よって、ブランド力が高く、堅実に安定している企業。報酬が高くなくても人間関係が良好な企業。適正な勤務時間・勤務体制が整っている企業。これらの企業に応募が多数舞い込んでいるのが現状だ。そして、親も企業に「子どもの人生を潰されたくない」から、経験が乏しいわが子どもに対して干渉するのだ。「確かに企業側の責任は重い。『会社のため、株主のため』に従業員の人格までも踏みにじることが横行しているケースもある。これは、経営陣が変わるしか方法はない。これからの若者が、自分の能力を存分に発揮できる仕事場を整えておくことが、企業の義務だ」(上場会社人事担当幹部)
今就活している次世代の人々が、夢やビジョンに向かって思い切りチャレンジできる仕事場をつくることは、急務である。「人間は、苦痛や理不尽なことで叩かれて強くなるのだ」という前近代的で、人間を道具としている意識の企業風土がいまだに存在する。そんな企業は優秀な人材が育つことなく、また発掘もできない。では、どうすればいいのか?それは、経営者が従業員をリスペクトすることだ。毎日朝夕に「ありがとう。皆さんの働きで支えていただいている」という言葉で気持ちを表すだけで、激変する。「全国や世界に展開している巨大企業では、そんなことは不可能だ」と反論を受けるが、手段はある。スカイプなどの通信方法を活用するなどすれば可能だ。また、どうしてもできないという巨大企業であれば、チームやセクションごとのリーダーがそれを代行すれば良いことだ。上の立場である人間が、部下をリスペクトすることで仕事場は活性化する。仕事の価値が高まり、時間を惜しんで成し遂げようとする風土ができる。人々は、認められることで意欲が増す。そうすれば、勤労意欲が高まり、仕事のやりがいというモチベーションで就活する人々が増えていくだろう。就活の学生に覇気がないのではない。企業側が、風土を作ればいいのだ。それは、表面上の待遇や福利厚生を繕うのではなく、お互いがリスペクトする仕事場を作ることだ。
(了)
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