2024年12月22日( 日 )

【博多駅前陥没事故】市交通局、賠償責任は大成JVに。市側には責任なしとの見解

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 福岡市のJR博多駅前で発生した道路陥没事故の原因を調査していた国の第三者委員会の最終報告書が、30日に取りまとめられた。それを受けて福岡市交通局は31日、記者会見を実施。事故発生にともなう損害賠償費用については、施工業者である大成建設JV(共同企業体)が負担すべきとの見解を示した。設計・監督を担当した市側には、損害賠償についての責任はないとしている。

 会見では、まず初めに陥没事故によって周辺の交通や市民生活、経済活動に重大な影響を与え、市民や関係者に迷惑・不便をかけたことを陳謝。その後、第三者委員会の最終報告を受けて、事故要因の可能性として示唆された「自然的要因」と「人為的要因」の2つについての見解を示した。地質や地下水位に関する自然的要因については、事前に可能な限り性質や状態の把握に努めていたとしながらも、局所的な特性の把握については技術的に困難との認識も持っており、その前提のもとに福岡市と大成JVが共通認識を持って設計・施工を進めていたと説明。設計・施工に関する人為的要因については、水圧のリスクや扁平断面などの設計上の安全性を確認しながらも、施工者からの提案により薬液注入の代用となる方法を採用したが、施工上やむを得ずに鋼管の根元部分を切断する必要があったため、十分な地山改良効果が発揮されずに事故を発生させた要因となった可能性があると言及した。

 計測管理が不十分であったとの指摘については、第三者委員会の「計測状況の把握に遅れが生じていたが、状況変化は急速であり、その時点で陥没事故自体を防げたとは言い難い」との見解を紹介したうえで、市交通局としては、施工停止することをあらかじめ決めていたレベルの計測値超過をリアルタイムで把握することなくJV側が施工を継続したことは、NATM工法において必要とされる適切な計測管理が行われておらず、「契約が守られていなかった」との考えを示した。

 今回の第三者委員会の最終報告を踏まえ、営業補填やライフライン復旧等の損害賠償費用の負担割合については今後、大成JVと協議をしていくとしたうえで、交通局としては民法および契約条項に基づき、原則通り施工業者が負担すべきものとの見解を提示。「(発注者である)交通局が担当した設計や監督では、賠償責任を負うような過失はなかった」として、反省点はあったものの、損害賠償責任は負わない考えを示した。

 なお、3月30日時点で、事故で休業せざるを得なくなった事業者や店舗などとの賠償に関する交渉件数は449件。そのうち、損害賠償額を提示しているものが240件(約53%)で、そのうち合意まで至っているものが154件(約34%)。合意に至っている分の賠償金額の合計は、現時点で約3億円としている。

 今後については、具体的な工事再開方法・再発防止策を検討したうえで、技術専門委員会における助言を受けて、その結果を踏まえて国へ事故報告書(事故原因や工事再開方法・再発防止策の報告)を提出。市民や議会に報告を経て、早期の工事再開に向けて全力で取り組んでいくとした。

【坂田 憲治】

◆「博多駅前陥没事故」記事一覧>>

 

関連キーワード

関連記事