
地域政党「新党大地」代表で自民党参院議員でもある鈴木宗男氏(維新離党後に自民党復党、今回の参院選全国比例で当選)が8月20日、支持者向けの勉強会「東京大地塾」を永田町で開催、元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏が同席した。2人とも石破首相続投支持の立場で、基調講演後の質疑応答で佐藤氏が高市早苗・前経済安保担当大臣らほかの有力総裁候補と比較しながら石破首相続投支持の理由を詳しく述べる場面もあった。
ただし時間の制約もあってか、佐藤氏に続いて鈴木氏が石破首相の進退について自論を述べることはなかったため、大地塾終了後に「石破首相降ろし」について聞いてみた。
鈴木宗男氏(以下、鈴木) 8月末に(参院選)検証が出る。総括がされる。それで初めて、(総裁選について)どうするのかという議論になるはずだ。ただ今いえることは、「石破降ろし」「(首相は)辞める」と言っている議員のなかに裏金議員が何人もいる。この連中がもっと謙虚に反省しなければいけない。(参院選で)私は1つの団体・組織ももらわずに、1人で戦った。北海道から沖縄まで遊説をして歩いて、一番厳しく言われたのは「裏金のケジメがついていない」ということだ。とくに裏金で指摘された議員が政局よろしく、いろいろうごめく。「ここが自民党のよくないところだ」と厳しく言われた。私は、その声が正しいと思う。
だから私は両院議員総会でも議員懇談会でも「まずは裏金問題をきちんと、もう一回ケジメをつけることが自民党再生の一丁目一番地だ」と言ったのだ。
──自民党が(参院選で)負けたのも、石破首相のせいというよりも裏金議員が大きな原因ではないかと。
鈴木 衆院選、都議会議員選挙、参議院選挙、3つとも全部そうだ。これをもっと考えなければいけない。
──「自民党敗北の原因をつくった裏金議員が石破降ろしをするのはナンセンスではないか」と。
鈴木 理屈が通らない。「おまえたちのお蔭で負けたのだよ」と多くの人は見ているわけだから。
自民党の総裁選挙管理委員会は8月19日に初会合を開催し、総裁選前倒しへの各所属議員らの意思確認について、記名の書面方式となる可能性が高くなった。「無記名方式が望ましい」との意見に対して、逢沢一郎委員長が「総裁選の実施を決める非常に重要な話だ。誰が書いた物か分からないのは、いかがなものか」と述べたためで、石破降ろしが尻すぼみになる要因になると見られている。総裁選前倒しには国会議員と都道府県連の半数以上の賛成が必要だが、未達で石破続投の場合、賛成した国会議員が干される恐れが出てきたのだ。
ほかにも石破首相への追い風が吹いている。トランプ関税問題が一段落して株価も上昇したためか、内閣支持率が上向いていることだ。強気の姿勢の鈴木氏は、こう続けた。
「私は、石破さんは辞める必要はないと思っている。ここは政治空白をつくるべきではないし、逆に『総裁選をやれ』というならば、どっちみち1カ月くらいの政治空白ができるわけですから(総)選挙をやったほうが良いです。石破さんは解散・総選挙をやって国民に信を問うたほうが分かりやすい。そうすると、自民党の連中もすっきりすると思う」(石破内閣支持率上昇について)世論(調査)というのは参考材料だ。やはり重く見ないといけない。それ(世論調査)と自民党内が乖離しているのがおかしい。だから冷静になることだ」。
いまや石破降ろし批判の急先鋒となった鈴木氏だが、先の東京大地塾の締めの挨拶では、盟友の佐藤氏が仮性動脈瘤手術を受けて退院したことを祝福した。そして鈴木氏が「佐藤さんには神さまがついていてまだまだやるべき大きな使命が与えられていると思っている」と締めくくると、佐藤氏も「少し仕事を減らそうと思っているが、ここ(東京大地塾)には毎回来ます」とこたえた。
先の参院選ではいったん落選報告会見を開きながらもギリギリで当選した鈴木氏と、手術を経て復帰した佐藤氏──発信力のある“強運コンビ”が石破首相続投を訴える。「退陣へ」と読売新聞と毎日新聞に報じられても辞任を否定、土俵際で踏み止まる石破首相に強力な援軍が現れたようにも見える。石破降ろしの気運が萎んでいくのか否かが注目される。
【ジャーナリスト/横田一】