予算案スピード通過~財政は野となれ山となれ!(1)
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2月28日の新聞各紙の見出しには「予算案スピード通過(衆院・戦後2番目)」の文言が躍った(3月27日に参議院予算委員会で可決・成立)。安倍政権が重視する防衛費と公共事業は5年連続で増加した。税収が16年度当初比で1,080億円の微増にとどまるなか、一般会計の予算総額は97兆4,547億円に膨らみ、過去最大を5年連続で更新した。日本の累積赤字は1,053兆円(2016年6月末)ある中で、今回歳入の穴埋めのための新たな国債(国の借金)発行額は34兆3,698億円になる。
国民が誇って欲しいのは「スピード」ではなく充分かつ真摯な「議論」である。これでは国の借金は200年、300年かかっても完済できない。安倍政権は万策尽きて「国民が地獄を見ることを承知の上で、究極の財政再建策『ハイパーインフレ』に舵を切る」覚悟をしたのか。1990年代から一貫して「日本の財政危機」に警鐘を鳴らす藤巻健史参議院議員に聞いた。参議院議員 藤巻健史氏
現在の日本には「財政規律」が無いに等しい
――2017年度政府予算案が3月27日に可決・成立しました。本日は時には議員としての立場を離れて、財政の専門家としていろいろお聞きしたいと思っています。まずは、今年度の政府予算案について率直な感想を教えて頂けますか。
藤巻健史氏(以下、藤巻) 参議院に入ってからは、予算委員会など各委員会はほとんど全ての時間を「森友学園」への国有地売却問題にとられ、率直なところ実質的に予算を審議する時間がなかったことを残念に思っています。私も「森友学園」問題がとても重要であることは充分に認識しています。しかし、日本国にとっては、それに優るとも劣らず「財政」の問題も重要であったからです。
衆議院の審議を遡って考えるならば、最も不思議かつ良くないのは国の借金がどんどん積み上がっていくのに、この点に関する議論が全くといっていいほど行われなかったことです。「財政規律」(財政を放漫に運営するのではなく、秩序正しく運営するための規律)がほとんどないに等しいと言えます。バブル崩壊以降、本年度の約34兆円を含めて、日本の財政は毎年赤字です。本来財政というものは、歳出と税収+税外収入のバランスがとれていないといけません。「財政法第4条」では、「建設国債」(公共事業費など)は認めているものの「赤字国債」は認めていません。これは先人の知恵なのですが、現在は全く無視されています。
国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。(財政法第4条1項)憲法に「均衡財政」規定が盛り込まれている
ドイツ・スイスなどの憲法にはいずれも「均衡財政」の規定が盛り込まれています。また、1992年 に調印された「ユーロに参加するため」のマーストリヒト条約では「単年度の財政赤字(新規国債発行額)がGDPの3%を超えてはならず、債務残高がGDPの60%を超えてはならない」としています。GDPの3%を超え、是正処置が不十分の場合には、最大で2%の罰金を科せるとなっているのです。この基準に現在の日本を当てはめてみます。今日本のGDPは約500兆円、従って単年度赤字が15兆円を超えれば1兆円の罰金となります。ところが今年度の日本の財政赤字は15兆円の2倍を超える約34兆円です。
選挙の勝利を目的とした自民党大衆迎合政治
ここまで累積赤字が積み上がってしまった原因の1つは、現政権を含めて、自民党の大衆迎合政治の結果です。「歳出ばら撒き」で国民の歓心を買い、「歳入は低い税率」で国民の歓心を買うという、全ては選挙に勝つことだけを目的に、「いいとこ取り」政策を続けてきました。歳出は極大化、税収は最小化という「国民受け」政策を長年行っていれば、累積赤字が巨大化するのは当然のことです。
これに加えて、もう1つ大きな原因があります。それはこのような政治の暴走は、日本以外の先進国では、通常であれば市場(マーケット)が止める役割を果たします。しかし、日本の場合は、市場がそのような役割を果たすことができなくなるような仕組みができています。政治家の暴走を止めることができないのです。
(つづく)
【金木 亮憲】
<プロフィール>
藤巻 健史(ふじまき・たけし) 参議院議員(日本維新の会)・経済評論家
1950年東京生まれ。一橋大学商学部卒業後、三井信託銀行に入行。80年に行費留学してMBAを取得(米ノースウェスタン大学大学院・ケロッグスクール)。85年モルガン銀行入行、東京支店長を経て2000年に退行後、フジマキ・ジャパンを設立。世界的投資家ジョージ・ソロス氏のアドバイザーなどを務める。2013年の参議院選挙で当選、現在に至る。1999年から2011まで一橋大学経済学部で、02年から08年まで早稲田大学大学院商学研究科で非常勤講師として毎年秋学期に週1回半年間の講座を受け持つ。日本金融学会所属。東洋学園大学理事。関連キーワード
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