2024年11月27日( 水 )

スマホ決済はキャッシュレス社会の起爆剤に(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 ところが、クレジットカードが普及してくると、数枚のクレジットカードを保持するような人も増えてきた。それにポイントカードまで加わると、財布はパンパンになる。
 そこで、いつでもどこでも持ち歩く携帯電話にクレジットカード機能を取り込んで、クレジットカードなしに支払いできるようにしたのがスマホ決済である。

 クレジットカードがそれほど普及していない中国では、むしろモバイル決済の普及率が圧倒的な状況である。中国でのクレジットカードの普及率は4%ほどであるのに対し、支付宝(アリペイ)、 微信支付(WeChat Pay)などのスマホ決済の普及率は90%を超えている。屋台でもスマホ決済ができるほどである。2017年の中国のスマホ決済の市場規模は15兆元(約230兆円)を見込んでいる。中国はクレジットカードをジャンプして、スマホ決済に進んでいる状況である。

 日本でも訪日中国人観光客を狙ってスマホ決済に対応する店舗が増加している。 微信支付 (Wechat Pay)の場合、16年2月時点で30万以上の店舗が対応しているようだ。スマホ決済のメリットは何かというと、まず簡便である点だ。スマホ決済を利用しようとすると、最初だけアプリをインストールし、そのアプリに自分のクレジットカード情報を紐づけて登録する必要がある。一度登録しておけば、次からは支払いの際にアプリの支払い画面を呼び出し、そこに現れたバーコードもしくはQRコードを読み込ませるだけで支払いが完了する。

 スマホ決済は応用範囲が広く、大きな可能性を秘めている。例えば、キャッシュの場合は両替すると手数料を高く取られるが、両替なしにスマホ決済を使うことで両替手数料を抑えることも可能になる。紛失した場合のリスクもスマホ決済、クレジットカード、キャッシュの順に大きくなる。スマホ決済を行うには指紋認証などの本人認証が必要なため、他人に使われる可能性は低くなる。その他に送金、割り勘などにも対応できる。韓国ではATMでお金を引き出すことも可能となっている。

 政府の立場からしても、スマホ決済の方が望ましいと思われる。スマホ決済の場合、いつ、どこで何をしたかが記録として残っているため、政府は監視や管理がしやすくなる。業者にとってもメリットがある。ユーザーのアカウントが取得でき、ポイントを付与したり、販売情報を届けたり、追加マーケティングができるようになるからだ。とくに日本は20年に東京オリンピックを控えていて、訪日観光客の増加が予想されるため、外国人の支払いの選択肢を増やすことは重要である。

 スマホ決済には大きく2つの方式がある。アプリをインストールしてバーコードなどをスキャンする方式と、非接触ICの方式だ。中国のスマホ決済はアプリ方式であり、日本のスイカ、Edyは非接触ICのなかのFelica方式で、アンドロイドペイ、アップルペイ、サムスンペイなどはNFC方式である。
 今後どの方式が市場を拡大させるかはまだわからないが、スマホ決済が伸びていくことは間違いないだろう。拡大するスマホ決済がキャッシュレス化の起爆剤になるのかどうか、動向に注目だ。

(了)

 
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