2024年12月22日( 日 )

福岡市空港出資問題、出資を求める条例案が再議で否決

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結果を左右したのは“1票”

 13日未明、福岡市議会本会議で、高島宗一郎市長の「再議」により、自民党市議団が再上程した「活力ある福岡空港づくり基金条例案」が賛成41票、反対21票で否決された。同条例案は、国が福岡空港の運営を委託する民間事業者に対し、出資しないとする高島市長に、出資を求めるというもの。「再議」とは、議会で議決された議案に対し、地方自治体首長が議会に議決のやり直しを求める制度。あらためて条例案を可決するには出席議員の3分の2以上の同意が必要となる。

 同条例案は、3月28日の本会議で賛成39票、反対20票(退席棄権2名)で可決された。高島市長は、議決後に市上層部による市政運営会議を開き、「再議」の方針を決定。同31日付で「再議」に付した。市議会は会期を延長し、4月11日、12日で同条例案の審議および採決を行う日程とした。11日の本会議が開かれるまでの間、同条例案の提案者の1人である橋田和義市議が「もともと反対だった」などと表明し、自民党市議団に退会届を提出。橋田市議の1票が結果を左右する形となった。

 空港出資をめぐる議論では、中園政直副市長と荒瀬泰子副市長が、同条例案に賛成する一部の議員に対し、出資をめぐる議論の範囲を超えた翻意を促す働きかけを行なっていたことが発覚。中園副市長は、賛成派の鬼塚昌宏市議に、「君の将来を案じています」とのメールを送り、荒瀬副市長は、3月28日の採決で退席棄権した2名の市議(緑と市民ネットワークの会の荒木龍昇市議と森あや子市議)に、4月7日、出席して棄権するよう求めていた。「再議」において2名の市議が出席した場合、可決には42の賛成票が必要となる。仮に、橋田市議が反対に回らず、3月28日の採決と同じ結果(自民党市議の議長票含む賛成40、反対20、棄権2)としても否決となる。

 高島市長については、11日の本会議の質疑で、市議への働きかけを一切否定。しかし、冨永正博市議(福岡維新の会)が高島市長からの第三者を通じた働きかけがあったとの証言があり、高島市長の虚偽答弁の疑いが浮上。議会側は再三再四、同条例案の審議を付託された常任委員会(第3委員会)に出席し、説明するよう求め、最終的には代表者会議による議会の総意として出席を求めたが、高島市長はすべて拒み(画像参照)、このために審議が何度も中断し、議会進行に大幅な遅れが生じた。議会側の要求に応じない高島市長だが、12日昼、マスコミの取材に応え、議会について「少し乱暴かな」とコメントした。

2日連続の深夜議会に特別の労いなし

 度重なる出席要求に、「出席説明の必要性がわからない」、「法的根拠がない」などとして出席を拒んだ高島市長。地方自治法第121条には、「地方自治体の首長は、議会の審議に必要な説明のため、議長の要求に応じて出席しなければならない」との規定がある。また、冨永市議の件以外でも、中園、荒瀬の両副市長が行った働きかけについての高島市長の関与(両副市長は否定)や、11日夕刻に市庁舎を離れた理由とされる公務「大名小インキュベート施設のイベントの準備」などへの疑義も生じている。ラチがあかない出席説明をめぐる高島市長とのやりとりに、議会側は議会の進行や市職員への負担軽減を優先し、高島市長への説明要求については、後日、別の機会を設けて行っていく方針とした。

 荒瀬副市長から出席棄権を求められた緑と市民ネットワークの会の市議2名は、地元市民の声を確認し、熟慮の末、「たとえ少額ではあっても民意は(新運営事業者の)株主責任の担保を求めている」として、賛成票を投じることを決断した。また、天野こう市議のみが同条例案に反対していた福岡維新の会(4名)では議論を重ね、党議拘束で賛成票にまとまるという観測も立っていたが、結局、天野市議は反対票を投じ、再可決に1票足りない結果になった。

 否決とはいえ、過半数を大きく超える数が賛成した同条例案。市議からは、「結果を重く受け止め、議会軽視の姿勢をあらためて欲しい」との声があがっていた。2日間、同条例案の賛否を問わず、多くの市議や市職員が明け方未明まで審議に取り組んでいた。しかしながら、議会終了時の高島市長のあいさつは実に素っ気なく、審議のプロセスや結果に関する所感や特別の労いの言葉はなかった。今回の議会の紛糾は、昨年10月に出資をしないことを国に伝えた後で市議会に報告したという高島市政の議会軽視のプロセスから始まっている。福岡市の空港出資について、多くの市議(なかには政治生命を賭した市議もいたように思える)や市職員が真剣にこの問題に向き合っていたはずだが、彼らの想いを、高島市長はどのように受け止めたのだろうか。

【山下 康太】

 

3度目の出席拒否理由(クリックで拡大)

 

 

 

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