「日販飛ばし」で加速する旧世代出版ビジネスの解体
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ネット通販最大手のアマゾンジャパンは、今年6月から一部の既刊書籍の取り扱いについて、出版取次最大手の日本出版販売(日販)を通さず、直接出版社と取引する。日販をはじめとした出版取次は、商品の在庫管理から疑似的な金融機能までを持ち、出版業界の要ともいえる存在。雑誌や書籍が長期的な販売不振に突入するなか、効率化を目指すアマゾンが「日販飛ばし」を仕掛けることで、ますますその存在意義が問われることになる。
一般の消費者が意識することはまずないが、書籍や雑誌にも「卸売業者」が存在する。これが出版取次と呼ばれる業種だ。出版社(メーカー)が作った書籍や雑誌を出版取次(卸)に搬入し、需要に応じて書店(小売店)に卸す……というとよくある商品流通の形だが、出版流通では卸にあたる出版取次は、書籍の印刷部数(生産量)を決める、また書店の品ぞろえにも影響力を持つなど、非常に大きな力を持つことが特徴である。また代金の回収や支払いを代行する機能も持つ。
ちなみにこの「金融機能」を当てにして、経営の苦しい中小出版社は自転車操業でなんとかやりくりを続けているのが実態だ。出版社は印刷した書籍を取次に納品すると、商品の代金をいったん全額受け取ることができる。書籍が書店に配本され、売れ残ったものが返本されれば取次に返金しなければいけないが、返本・返金が発生するまでのタイムラグのあいだに次の書籍を取次に納品すれば、また全額分の代金がもらえる……という繰り返しだ。そのうちに大ヒットが生まれるか、もしくはタマ切れを起こして倒産するか。まさに血を吐きながら続けるマラソンだといえよう。さて、このような日本の出版界の商慣習を良くも悪くも支えてきた出版取次も、今や出版業界全体の縮小傾向には抗しきれない。業界3位だった大阪屋が楽天の傘下に入り、栗田出版販売、太洋社が次々と破綻に追い込まれている。その影には、業界ビッグ2の日販とトーハンが有力な書店を独占していることもあるという。
そんななかで、すでにどんな書店チェーンよりも巨大な存在になったアマゾンジャパンが、限定的とはいえ日販を外すという選択をしたことは、ネット通販業界というよりも出版業界にとって強烈なインパクトである。出版取次の存在には功罪両面があるのは間違いないが、現在の出版業界のビジネススキームを決定的に導いているのは日販・トーハンの2社なのだ。
アマゾンの「日販飛ばし」が、出版業界の終わりの始まりなのか、それとも出版社の再生を促す暁鐘なのか、注目されるところである。
【深水 央】
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