2024年12月23日( 月 )

小池百合子東京都知事が豊洲新市場の耐震性問題を黙殺

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 東京都中央卸売市場の移転の可否をめぐる最終判断が注目される小池百合子東京都知事が、移転先として建設された豊洲新市場の耐震性問題を黙殺した。

 

移転問題を根底から覆す重大事実

耐震性に疑問符が付く豊洲新市場

 NetIB-NEWS((株)データ・マックス)は3月31日、小池都知事あてに、協同組合建築構造調査機構(福岡県大野城市)の仲盛昭二代表理事の分析に基づき、豊洲新市場の水産仲卸売場棟の耐震性の問題に関する質問状を送付。2週間の回答期限(4月15日)を過ぎても回答は得られず、同月24日、あらためて書面で回答の意思の確認を実施したが、現時点で何ら回答は得られていない。小池都知事は、問題の事実を否定せず、沈黙を続けている状況だ。

 仲盛氏はマスコミの依頼を受けて、豊洲新市場の建築物の構造設計を分析。そのなかで、水産仲卸売場の構造上の問題を2点指摘した。1つは、最下階の柱脚が、必要とされる鉄量(鉄筋量)の56%の強度しかないこと。もう1つは、1階部分の保有水平耐力計算における構造特性係数(Ds値)が間違っていること。この結果、建築関連規定の半分以下(約48%)の強度しかない「いくら上部が丈夫でも、足元が弱く安全性が確保できない危険な建物」(仲盛氏)となっている。

 熊本地震では、1階部分を上層部分が潰す形となって倒壊した住宅やマンションが散見されたが、豊洲新市場も地震などによるダメージで同様の被害を受けるおそれがある。建物の安全性は移転の大前提であり、移転中止の強力な根拠になる。仲盛氏は取材に対し、「私は、技術論において主観的な見方をしているわけではない。客観的かつシンプルな指摘をしている。知りたいのは、法を踏み越えた理由。それが意図的なものであれば、耐震偽装にほかならない」とコメント。同氏は、東京都の市場移転問題とは無関係であり、あくまで専門家としての見解であると強調する。

 

建築設計業界の「パンドラの箱」

 しかしながら、小池都知事にとっては、仲盛氏の指摘する事実が表に出ることは実に頭の痛い話となる。問題の水産仲卸売場棟を設計したのは、大手建築設計事務所の(株)日建設計(東京都千代田区)。同社は、移転問題を検討する東京都の市場問題プロジェクトチームにも参加し、「豊洲市場の建物は、法令を遵守するとともに、東京都が求める安全性能を満たしています」と宣言した。移転問題の最終局面ともいわれるなか、この発言を根底から覆す仲盛氏の指摘が明るみになれば、検討チームの信用は失墜。今までの努力が水泡に帰す。また、東京都が建築確認を行っていることから都知事の責任も問われることになる。

 なぜ、このような重大な問題が表面化しないのか。それには、長年、放置されてきた建築設計業界の「パンドラの箱」とも言うべき、深刻な問題が背景にある。依頼を受けた建築物について、構造設計や耐震性についての調査を行っている仲盛氏は、豊洲新市場と同様の耐震性の強度偽装が全国各地の大多数の建築物に共通して存在する可能性が高いと分析。とくに2007(平成19)年以前に建てられた建築物に、その傾向が強いという。仲盛氏は現在、有志とともに「欠陥マンション構造研究会」(福岡市)を設立し、本来あるべき耐震性と、それに基づく資産価値の回復を目指し、潜在被害者(不動産所有者および住民)を救済するための無料調査を実施している。

 業界問わず、大手企業の重大ミスや経営問題が続出する昨今、建築設計業界も例外ではない。既得権を守るための隠蔽体質は、規模が大きければ大きいほど強力だ。豊洲新市場の耐震性の問題に関する質問状は、小池都知事と同時に、日建設計の亀井忠夫代表取締役にも送付した。結果は、小池都知事と同じく、いまだ無回答。同社にとって、豊洲新市場以外にも飛び火するであろう同問題は、いわばアキレス腱。自らさらけ出し、そこに鞭打つことはしないはずだ。黙殺は、この重大ミスが実在していることを暗示している。

【山下 康太】

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