【技術の先端】自動運転技術を支えるセンサーシステム(4)
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九州工業大学 榎田修一 教授
現在注目されている技術の1つに「自動車の自動運転」がある。一口に自動運転といっても、当然ながら、そこにはさまざまな技術が用いられている。今回は自動運転時に周囲の状況を「認知」する技術についての研究を行っている、九州工業大学の榎田修一教授にお話を聞いた。
オリンピックで自動運転が見られる?
――昔、自分たちが子どものころの雑誌などの「未来の想像図」で、チューブ型の道路を未来の自動車が走っているというイラストがありましたが、お話を聞いているとイメージ的にはあれが近い気がします。
榎田 確かに近いかもしれませんね。磁気マーカーみたいなものがずらっと埋まっていて、そのレーンをひたすら走る。専用の自動車にはソナーが付いていて障害物や車間距離を認識している。三次元地図や道路上のチップで自分がどこにいるかがわかっているので乗降位置もぴったり。東京オリンピックではそういう仕組みを自動運転としてお披露目するかもしれません。
おそらく皆さんが想像するような「自動運転」、我が家に自動運転してくれるクルマがあって、あそこの飲み屋に行きたいといえば勝手に連れて行ってくれるというのは、もう少し先の話でしょうね。――東京オリンピックは豊洲近辺ですから、都内といっても、比較的開発しやすいでしょうしね。
榎田 そうですね。東京都内でも、本当に都心で自動運転車を走行させるのではなくて、もっと限定的な空間でやるのではないかなと個人的には予想しています。例えば、空港のなかだけでバスがどんどん自動で運行しているなど、他の交通手段を持った人たちと交わらないところでお披露目として実現される可能性もあります。
――逆に言うと、そこまで限定してしまえば、今すぐやることはできると。
榎田 できると思います。法律面での整備の問題もありますが、技術的な面に絞って考えると、どれだけ資金をかけてもいい状況であるならば、自動運転の披露の場として東京オリンピックに合わせて限定的な地域でお披露目するというのは、案外あると思います。
事業化するためには、サービス体制をどう作るかも考慮しなければならないですね。オリンピックの期間だけでいいなら、管制センターなどを継続的に持つ必要はないのでランニングコストを考えずにできますが、「ちゃんとペイするようにしましょう」となると、ちょっと大変ですね。
オリンピックで技術的なお披露目を済ませて、その後一気に自動運転のクルマが普及するというより、限定的なサービスのまま、「ここなら事業としてペイできる」という場所や方式を探して、少しずつ事業化していくと思います。
みなさんが期待するような、いたるところで自動運転のクルマが走っているというのは残念ながらもう少し先じゃないかなと思います。我々としても認知能力を上げる研究はしていますし、さまざまな企業さんでも認知モジュールが発表されています。もちろん、トータルのシステムとしての完全自動運転が本当に動くのかという検証が今後どんどん行われていきます。
認知・判断・制御の各モジュールを繋いでいくという部分が自動運転の肝になっていて、最終的にそれがシステムとして、サービスとして本当に提供できるクルマなのかという検証はこれからもどんどんやっていかなければならない。
とはいえ、現段階では毎回公道を走らせていたら事故が多発しますから、我々の研究室ではシミュレーション環境を利用した自動運転技術、とくに認知に関する性能の検証をしているところです。昨年、経産省の「革新的周辺環境認識技術の開発」というプロジェクトで検証し、今年6月ごろから昨年度の研究成果が経産省のホームページにアップされますので、そちらで詳しいことがわかりますよ。(つづく)
【取材・文:犬童 範亮】<プロフィール>
榎田 修一(えのきだ・しゅういち)
1974年、福岡県太宰府市生まれ。九州工業大学 大学院情報工学研究院 知能情報工学研究系 教授。研究分野はパターン認識、画像処理、画像解析。関連記事
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