【BIS論壇】国家情報局創設、その5

 NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
 今回は8月10日の記事を紹介する。

 高市政権肝いりの「国家情報局」、「国家情報会議」が7月31日に発足した。過去4回、「BIS論壇」で国家情報局に関して、軍事情報やスパイ情報などよりもまず経済情報の収集、活用に尽力することが必要であると力説してきた。

 そのためには米国CIAの人員2万人に対し700人と極めて少人数の情報局要員の情報教育こそが先決で必須だと強調してきた。

 21世紀のAI、ICT時代において、国家競争力は軍事情報もさることながら経済情報、すなわちビジネスインテリジェンスの収集活用が必須となることを声を大にして強調したい。

 筆者のビジネスインテリジェンス研究の恩師、スウェーデン・ルンド大学の故ステバン・デジエル博士は世界で最も早く、50年前の1970年代初めに「ビジネスインテリジェンス講座」を大学院に開設。ビジネスインテリジェンスの創始者、Guruとして有名だ。

 同博士はNECの故小林会長の「C&C理論」を高く評価していた。筆者が過去35年にわたり主宰している「日本ビジネスインテリジェンス協会―BIS」の1992年2月12日の発会式には遠路スウェーデンから参加。BIS顧問のドクター中松、故小野田寛郎陸軍情報将校の開会挨拶に次いで「ヨーロッパにおけるビジネス競争情報とその管理」と題し、国家競争における経済情報の重要性を強調された。

 同博士の80歳記念論文集“ The Intelligence Corporation-The Privatisation of Intelligence-“ Taylor Graham, London、1991で筆者は「日本の総合商社の競争力の源泉はビジネス情報の収集、活用にある」と強調したが、同博士は強く賛意を表され、国家においても、21世紀は武力よりも経済情報力、技術力が国家の命運を決すると強調された。

 かかる状況下、EU(ヨーロッパ連合)ではEcole de Guerre Economique(経済戦争学校)の設立に続いて、2006年にパリ市近郊のベルサイユにEcole Europeenne d’ Intelligence Economique(ヨーロッパ経済情報大学院)を設立、ヨーロッパ連合の経済情報教育に尽力している。

 米国では諜報の民営化に力を入れ、1986年にSCIP(Strategic Competitive Intelligence Professionals(戦略競争情報専門家協会))を設立。官民学の活発な活動を展開している。筆者も日本総合商社の情報収集、活用に関し講演を依頼され数回発表している。  

 情報教育に関してはSCIP、CIAなど諜報機関、大学情報教育関係者が中心となり、ボストンにAcademy of Competitive Intelligence(競争情報学院)を設立。軍・産・学での情報教育が熱心に行われている。以上より日本においても、まず国家情報局関係者の早急なる情報教育に注力することこそ先決であることを強調する次第だ。
(『知識情報戦略』石川  昭・中川十郎 編著・税務経理協会  参照)


<プロフィール>
中川十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)。

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