【技術の先端】自動運転技術を支えるセンサーシステム(5)
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九州工業大学 榎田修一 教授
現在注目されている技術の1つに「自動車の自動運転」がある。一口に自動運転といっても、当然ながら、そこにはさまざまな技術が用いられている。今回は自動運転時に周囲の状況を「認知」する技術についての研究を行っている、九州工業大学の榎田修一教授にお話を聞いた。
自動運転で到来するビジネスチャンス
――認知モジュールはどのような構成になっているのでしょうか。
榎田 自動運転の認知モジュールは、これまで各種センサーが苦手としている雨や夜、西日などの条件下でも正しく認知できるようなシステムを作っています。カメラが弱いところはLIDAR やミリ波で対応しています。カメラがダメだからやめようということではなく、組み合わせてお互いを補い合うような認知システムを作っています。
――そういった機器を製作しているメーカーさんは、自動運転の時代が来たらチャンスですね。
榎田 実際、車載を想定した基本センサーシステムは多くの企業さんと一緒に研究開発を進めています。今はそういう体制で作って検証していますが、開発した結果は経産省のホームページに報告書が掲載されますから、それを読んで、もし「うちならこの部分をもっと良くできる」という技術を持った会社があれば、そこにチャンスがありますね。
――中小企業でも部品単位で貢献できるわけですね。
榎田 LIDARの発光機や受光機部分のような部品もですが、機器の小型化技術、モジュールの冷却技術など、まだまだ可能性はありますね。基本となるセンサーシステムの開発報告書には、「この方式でさらに高精度なセンサーシステムを実現化するときには、こういうデバイスが必要だ」ということが明示されると思います。技術系のデバイスで勝負されている企業の方は、経産省などで公開される国家プロジェクトの報告書に目を通すことでビジネスチャンスがあります。国が発表する基礎研究、基礎開発の成果報告に目を通す時間をぜひ取ってもらいたいですね。
自動運転技術の最先端
――自動運転に関して、九工大では他にどのような研究が進められているのでしょうか。
榎田 私は「認知」部分に特化して研究していますが、九工大には人工知能の研究を応用して「判断」を担うモジュールを開発している研究室もあります。
「制御」に関しても、国家プロジェクトで「判断」を研究されている先生が「制御」と組んで研究されているので、「認知・判断・制御」がトータルでパッケージ化されていくことが期待されますね。他にも、九工大・早稲田大学大学院・北九州市立大が連携した「自動運転・安全運転支援総合研究センター」という組織もありまして、総勢で30人ぐらいの先生たちが自動運転にかかわる技術を研究しています。
これだけの人数が系統だって研究しているのは全国的にも珍しく、自動運転に関して、九工大は最先端のグループの1つといえます。もちろん、それぞれのモジュールに関しては単独で最先端の研究をされている研究室も多々ありますが、これだけ総合的に研究しているグループは、国内でも数えるほどしかありません。――自動運転に関して、九州で最先端の研究がされていることをうれしく思います。今後の研究にも期待しています。
(了)
【取材・文:犬童 範亮】<プロフィール>
榎田 修一(えのきだ・しゅういち)
1974年、福岡県太宰府市生まれ。九州工業大学 大学院情報工学研究院 知能情報工学研究系 教授。研究分野はパターン認識、画像処理、画像解析。関連記事
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