久留米商工会議所会頭が在籍する『幽霊会社』の正体(前)
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久留米商工会議所の本村康人会頭が四選を目指す際に、肩書にしていたのが(株)久留米業務サービス(資本金:120万円、本社:福岡県久留米市櫛原町63-4、二又裕介社長)の「取締役会長」であった。登記上の所在地には表札もなく、商号からはどのような仕事をする会社なのか見当もつかない。実態を探るべく、調査を行った。
電話帳に記載なし 会社の表札もなし
「私は議員ですが、(会頭が現在所属する会社が何をやっているかは)聞いたことないですね」。(株)久留米業務サービスについて聞き取り調査を行ってみたが、商工会議所議員の間でも詳細を把握している人はあまりいないようだ。所在地は久留米市櫛原町の不動産管理会社、(株)ニューフタマタの事務所兼個人宅。「二又」の表札が掲げられているが、久留米業務サービスの表札はない。同社に連絡を試みようとしたが、インターネット検索にもNTTのタウンページにも電話番号は掲載されていなかった。会社自体は2009年6月に設立されているため、「四選を目指すため設立したばかりの企業」というわけではない。本村康人会頭は、15年12月にこの会社の役員に就任した。
では、一体どんな会社なのか?と調べを進めてみると、「実態がない」という意見が多く寄せられた。とはいえ公的な場で、同社の名前が全く出てこないわけではない。4月29日に行われた商工会議所主催といわれるイベント「くるめ楽衆国まつり」では協賛企業に名を連ねていた。商工会議所会頭である本村氏の所属企業が協賛していることは自然な流れとも取れるが、「実態がない」と疑われる幽霊会社の協賛には、大きな違和感を覚えずにはいられない。
同社の二又裕介社長は取締役でもある二又一郎氏の子息だ。二又一郎氏といえばクレジットカード「モデッカ」を発行していることで知られるモデルクレジット(株)の代表。二又氏は本村商店の役員を退いた本村会頭を救った恩人と評されているが、同社とモデルクレジットの関係は不明。ただし本村会頭と二又氏の仲の良さは、議員の間では有名だ。
昨年11月の会頭選では対立候補が出馬せず、再選を果たした本村氏。その後は久留米業務サービスの取締役会長として、会頭の座に就いた。だが、実は会社に属さない個人事業主であっても、商工会議所の会頭にはなれる。昨日今日議員になった人物では不適格とされるが、本村会頭のように長年議員を務め、常議員、副会頭を歴任した人物であれば、会社に属さなくとも、周囲の支持さえあれば会頭になれたのだ。にもかかわらず、なぜ「実態のない」と揶揄されるような企業の役員に就任しなければいけなかったのか。
また、久留米業務サービスは従来、会社登記の定款に「ICカードサービス、電子マネーサービスに関する業務」を掲げていたが、15年4月には従来の業務からは想像できない業種が追加されているのだ。たとえば、酒類の小売販売業は本村会頭が酒卸の会社を経営していたため理解できなくもないが、「不動産の賃貸、売買、管理及び運用」「古物商」(右表を参照)などという項目がなぜ必要なのだろうか?取締役会長に就任時(登記変更はその前)に、定款の変更が必要だったのだろうか。腑に落ちないことは数多くある。
“地元の名士”は間違いないが拭えない違和感
本村会頭は昨年3月、全国の水天宮の総本山、久留米市の水天宮に咲く「くるめつばき」を安倍晋三総理に贈呈した。この様子は新聞などでも写真付きで大きく報じられるなど、久留米経済界きっての有名人だ。久留米業務サービスのほかにも、久留米市の第三セクターの(株)ハイマート久留米の代表取締役社長も務めている。これは久留米商工会議所の会頭が兼任することが慣例となっており、同会長には現久留米市長の楢原利則氏が就任していることから、公的な役職という意味合いが強い。その他、久留米学術研究都市づくり推進協議会の副会長なども歴任している。11年秋には黄綬褒章を受章され、「地元の名士」といってもおかしくはない人物であるだろう。だが、「何かスッキリしない」という声がさまざまな方面から漏れ聞こえてくる。
(つづく)
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