2024年11月23日( 土 )

海外で生き残りを賭ける製薬業界(前)

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 筆者は2005年より、下関厚生病院(現・独立行政法人 地域医療機能推進機構 下関医療センター)の治験審査委員会・倫理審査委員会の委員を務めている。以来、10年近く外部の治験委員として、患者への新薬投与についての審査に携わっているが、当初は日本の製薬会社の治験申請が多かった。しかし最近は、外資系企業の申請が多くなってきていると感じていた。

 そんな折、大手製薬会社のトップとお会いする機会を得た。そのなかで、「日本国内は人口減少にともない市場が縮小しており、海外への販売に力を入れている。ただ海外で売上を増やすにしても、得意の分野の医薬品を持っているかどうかによる。医薬品メーカーとして生き残るためには、バイオ新薬をいかに継続的に開発していくかにかかっている。世界の製薬会社にとって、今やシリコンバレーが世界の研究者が集結する新薬開発の最先端基地となっている」と語ってくれたのが、印象的だった。

 政府も高齢者の医療費負担増に悩んでいる。今回、国内の製薬メーカーの業績を検証するとともに、新薬開発の動きについて探ってみることにしたい。

売上高について

 【別表1】は、日本の製薬メーカー上位10社の売上高順位表である。

 売上高トップは武田薬品工業(株)で1兆7,320億円。第2位はアステラス製薬(株)で1兆3,116億円となった。製薬業界も経営統合が進んでおり、アステラス製薬は05年4月に山之内製薬(株)と藤沢薬品工業(株)が合併して誕生した会社である。
 第3位はボンカレーやポカリスエットで馴染みのある大塚ホールディングス(HD)(株)で、売上高は1兆1,955億円。ここまでが、売上高1兆円超えとなっている。
 第4位は第一三共(株)で9,551億円。以下、エーザイエーザイ5,390億円、中外製薬中外製薬4,917億円と続く。

 10社のうち、売上高が増加しているのは大日本住友製薬(株)と塩野義製薬(株)の2社だけで、残り8社は前期比マイナスとなっている。とくに大きく減少しているのは大塚HDで、前年比▲ 2,521億円。抗精神病薬「エビリファイ」が20年のパテントクリフ(特許切れ)を迎えたのが響いているようだ。

 17年度の売上高で前期比マイナス予想となっているのは、武田薬品・アステラス製薬・第一三共の3社だけとなっている。

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海外売上高について

 【別表2】は、海外売上高比率の順位表である。

 アステラス製薬の海外売上高は、武田薬品の1兆768億円に次ぐ8,309億円で第2位だが、比率は63.3%で武田薬品工業の62.2%を上回ってトップとなっている。第3位は大日本住友製薬で55.2%。この3社が50%を上回っており、海外への販売に力を入れているのが読み取れる。

 一方、海外売上高比率が一番低いのは中外製薬で19.6%。次が田辺三菱製薬で24.4%。協和発酵キリン(株)は28.0%となっており、この3社はやや内向きといえそうだ。

 塩野義製薬の海外売上高には、クレストールと自社創製のHIVフランチャイズのロイヤリティー収入(1,157億円)が大きく貢献しているが、パテントクリフを避けるためには、海外における独自の製造拠点づくりが今後の課題ではないだろうか。

(つづく)
【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】

 
(中)

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