実質経営者失踪の建設会社 不可解な組織変更は偽装工作か
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実質的な経営者である松下宗正氏の失踪が判明、あわせて同氏による業務上横領も疑われている九菱地所(株)(所在地:福岡市南区、松下照海代表)。失踪から1カ月以上が経過し、いまだ連絡が取れない状況にある。資金の管理をしていたのはこの宗正氏で、失踪直前に多額の預金が引き出されていたことから、会社の資金を私的に流用した業務上横領の疑いが浮上している。取材の過程で、不可解な組織変更が判明した。
短期間での本店移転に、代表者氏名変更
九菱地所とはどのような会社なのか。取材を進めると、不審に思われる会社組織の変更が確認された。
まずひとつが、所在地の移転である。2015年3月の設立以降、わずかな期間で本店移転が2度。それもかなり遠隔地の移転である。閉鎖登記を確認すると、設立時(15年3月)の所在地は、福岡市博多区築港本町。その後、16年7月に福岡県京都郡苅田町へ。さらに2カ月後の16年9月に現所在地である福岡市南区曰佐に移転している。地域性を重要視する側面を持つ建設会社が、ここまで短期間で本店を移すのは珍しいといえる。
また変更しているのは、所在地だけではなかった。
代表者氏名までもが変更されていたことがわかった。関係者への取材によると、「松下照海」代表の設立時の氏名は「下平雅之」であった。その後、失踪中の松下宗正氏の養子となっている。同一人物が使用したとされる2つの名刺もみつかっており、本人への取材で改名を認めたが、経緯については語らなかった。
通常、養子縁組での苗字変更はありえるが、名の変更は、家庭裁判所での許可などが必要で、現実的にハードルは高いはずだ。改名自体は違法でもなんでもないが、不適切な処理として考えられるのが、法人登記への記載である。
添付の九菱地所の閉鎖登記を見てみる。「取締役 下平雅之」が平成28年9月14日に「退任」し、同日「取締役 松下照海」が「就任」となっている。一見すれば、取締役交代だと思うだろうが、これは同一人物。通常なら、氏名変更とするべきだ。住所も氏名も変更されていることから、関係者は「2者が別人だ」と思わせる偽装工作ではないかと語っている。
短期間での所在地変更、代表者氏名変更は何を意味するのか。関係者も知らなかった事実に、不信感は募るばかりだ。
【東城 洋平】
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