2024年12月22日( 日 )

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団公演、大幅赤字を「ふるさと納税」で穴埋め(前)

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 開業1周年を迎えた久留米シティプラザ(以下、シティプラザ)。「年間53万人」というインチキ来場者数はさておき、初年度は久留米市出身のミュージシャン、藤井フミヤ氏のコンサートのほか、さまざまなイベントで話題となった。とくに、昨年10月4日に行われた「ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団」の公演は、チケットが完売するほどの大盛況。しかし、その収支は大幅赤字。その損失を公金で補てんしていたことが明らかになった。

4,874万円の赤字をこっそり血税で補てん?

 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団は、「現代の巨匠」である指揮者ズービン・メータ氏が指揮を執ることでも有名だ。昨年10月の久留米公演は、そのメータ氏が指揮者。市の広報誌では、シティプラザ開業初年度の目玉イベントの1つとして喧伝され、一般販売のチケットは完売するなど盛況となった。

 しかし、この公演が大幅赤字を計上していたことはほとんど知られていない。総チケット販売数は1,438枚。学生席5,000円から最前列のS席3万5,000円までの7つの指定席があり、チケット収入は計4,102万円。一方、支出の合計は8,976万円。そのうち、楽団手配にかかった費用が8,770万円と大半を占める。差し引き、4,874万円の赤字である。

 この損失を埋めるために「ふるさと久留米応援基金」が充てられたことが市担当者への取材でわかった。この基金は、「ふるさと久留米を愛し久留米市のまちづくりを応援する寄付者の思いを具体化すること」などを目的として2008年9月に制定されたふるさと久留米応援基金条例に基づくもの。いわゆる「ふるさと納税」である。2015年度の総務省の資料によると、久留米市は17億5,942万円、寄付件数3万1,046件で全国13位にランクイン。福岡県内では堂々のトップだった(全国1位は宮崎県都城市の42億円)。

久留米シティプラザ

 市のホームページによると、「ふるさと久留米応援基金」は、子育て支援、歴史継承・芸術の推進、健康・福祉、花と緑のまちづくり、祭・観光振興といった5つのメニューのほか、「ふるさと・くるめの『未来を創造していく」ための施策・事業に大切に使わせていただきます」とされる「市長おまかせコース」がある。その説明文にはシティプラザのイメージ画像が添えられており、シティプラザに使うことが示唆されているような印象も受ける。同公演については、大和証券グループが協賛しているが、協賛金は得ておらず、収入自体はチケット収入のみという。つまり、事業計画の時点で赤字になることは想定されていたはず。赤字を血税で穴埋めすることは計画のうちであった可能性が高いが、その赤字補てんについて、市民への説明は一切なされていなかった。

 シティプラザは文化芸術の公演を多く行うことで、まちのにぎわいを創出するという狙いもあって、昨年4月に開業した。しかし、開業後、まちの活性化につながっているかというと、疑問符を付けざるを得ない。1階部分のテナントでは、初年度で閉店・撤退があり、その後も一部で入居のない状況が続いている。イベント時にしか営業しない飲食店もある。商店街関係者の間で、以前よりは「人通りが増えた」「売上が増えた」という声はごく小数。「何も変わらない」といった声が大半だ。まちのにぎわい創出が思うようにできず、商業テナントが苦戦しているなか、収支バランスを度外視した演目ばかりを行えば、シティプラザの運営維持コストが最終的には市民への負担として重く圧しかかることになる。2年目を迎えた同施設が存続するためには、最低でも赤字にならない事業計画が必須となるが、役人目線の運営では厳しいだろう。民間企業で同様の運営をすれば、担当者はクビになるか、最悪、会社自体が倒産してしまう。

(つづく)
【矢野 寛之】

 
(後)

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