「危機対応融資制度」を悪用~商工中金の不正融資を検証する(後)
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商工中金が2011年12月から取り組んでいる東日本大震災復興特別貸付としての「危機対応融資制度」の取り扱いが減少している。そんな中、昨年4月14日21時46分、熊本県中央部で震度7の「熊本地震」が発生、16日にも震度7の本震が熊本を襲い、熊本県北東部の阿蘇地方から大分県西部にかけて大きな被害をもたらすことになった。商工中金にとってはまさに渡りに船だったのではないだろうか。
※【表1】は不正融資が大きくクローズアップされていく時系列表である。【表2】は不正融資ワーストランキング表。【表3】は九州の調査結果一覧表である。
この表から見えるもの
◆商工中金は九州に10支店(出張所1)がある。その内訳は福岡県3(出1)、長崎県2、佐賀・熊本・大分・宮崎・鹿児島に各1支店。熊本地震発生から6カ月が経過した昨年10月、鹿児島支店で不正融資をしていることが発覚。11月、商工中金は不正融資があったことを認めた。そのため全店を対象に第三者委員会による調査を開始。すると今年1月に名古屋支店などでも不正融資が見つかった。
◆今年4月25日、第三者委員会は調査報告書を提出。それによると全国92支店のうち35支店で99人が不正融資に関与。不正な貸付金額は861件の198億円と報告した。
不正融資の判定件数の第1位は池袋支店で307件(東日本大震災関連)。第2位は鹿児島支店で256件(熊本地震関連。この2支店が飛び抜けており、合計563件で、全体の65.3%を占めている)。事態を重く受け止めた政府の意向を受けて5月9日、経済産業省・財務省・金融庁は業務改善命令を発令した。◆5月24日、金融庁が本格的な検査に着手。もはや中小企業庁が出る幕はなく、大きな社会問題となった。商工中金は6月9日、業務改善命令を受けて、「作業工程並びに業務の改善計画」を提出。9月末までに全件調査を終えるとしていた。
◆9月11日、別掲の『商工中金の危機対応業務への取組みについて』をニュースリリース。
◆9月22日になって調査に携わっていた職員の一部に過去不正行為に関 与した者がいることが判明したとして、再調査のために1カ月の延長を発表。
透けて見える開き直り
この表は9月11日、ニュースリリースとして掲載した危機対応業務の取組実績である。第1四半期の実績ではなく、8月末日現在である。それからわずか10日後の22日に再調査のため1カ月延期を発表している。
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ニュースリリースした裏には、「危機対応業務は12兆4,942億円(222,990件)も取り扱っている。再調査をしているが今のところ不正融資は861件の198億円。金額でいえばわずか0.15%。件数は0.38%しかない。他にいくらか不正融資はあるにしても、ほとんどは正当な危機対応業務を取り組んでおり、社会に貢献していることを認めてほしい。」との、開き直りとも取れる意図が透けて見えるのだ。1カ月延長した調査の結果が今月末までに発表されるが、その内容次第によっては商工中金そのものの、存在意義が問われることになる。
(了)
【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】※クリックで拡大
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