元弁護士横領事件、9月12日に第1回控訴審の予定

 福岡県弁護士会に所属していた元弁護士・清田知孝被告の横領事件の第1回控訴審が、9月12日、福岡高等裁判所で行われる。

 事件は清田被告が弁護士であった当時、依頼人の預り金等を着服したとして3つの事件について業務上横領の罪に問われていた。第1審で検察側は執行猶予なしの懲役4年を求刑、弁護側は執行猶予付きの判決を求めていた。4月21日に行われた第1審判決で福岡地裁は、被告人に対して懲役2年6カ月の実刑判決を言い渡した。被告側はこれを不服として控訴していた。

事件のポイント

 1つ目の事件は、21年、清田被告が顧問を務める会社が提起した未払い金請求訴訟で、法律事務所の口座に振り込まれた金額を横領したもの。

 2つ目の事件は、22年、清田被告が刑事事件の弁護人を務めた女性から保釈保証金を預かったにもかかわらず、保釈手続きを行わずに横領したもの。

 3つ目の事件は、21年、清田被告が顧問を務める会社の債務整理において、回収した売掛金等を横領したもの。

 被告人は横領した金を、テレボートを利用して競艇の舟券購入に充てており、ギャンブル依存症であることを主張している。被告人は現在、ギャンブル依存症の矯正プログラムを受けている。

弁護士だからこそ起こし得た
不当勾留という重大人権侵害

 3つの事件はいずれも弁護士としての立場を悪用したものだが、とくに2つ目の事件については、当時被告が弁護人を務めた女性の保釈保証金を横領したことによって、女性を3カ月にわたって不当な勾留状態に置いた。女性が長く勾留状態であることを知った裁判官から保釈手続きをとるように促されても、手続きをとろうとしなかった。当時、勾留状態にあった女性にとって、担当の弁護士である被告人は全面的に信頼して頼みにせざるを得ない状態であった。

 第1審の判決は、そのような信頼を利用して保釈保証金を横領し、自身の横領が発覚することを恐れて女性を不当な勾留状態に置いたことをとくに悪質と断罪した。また、被害者女性が被告人の実刑を望む強い処罰感情をもっていることも当然とした。

 判決の通り、2つ目の事件で発生した不当な勾留は、被告人が弁護人であったからこそ生じ得た特殊かつ重大な人権侵害であり、弁護士の社会的信用を根本から揺るがす重大な事件であった。

 当該事件について福岡高裁がどのような判断を示すのか、控訴審の行方が注目される。

第1回控訴審の日時
日時:9月12日(金)午後1時30分
場所:福岡高等裁判所1014号法廷
   (10階・第2刑事部)

【寺村朋輝】

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