2024年11月22日( 金 )

どうなる?久留米・欠陥マンション裁判(1)~専門家インタビュー

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 福岡県久留米市の分譲マンション「新生マンション花畑西」の構造・施工の欠陥を巡り、設計事務所と施工業者(鹿島建設)に損害賠償を求めた裁判は、まもなく、結審を迎える見込みである。この裁判の原告区分所有者側の技術支援に関わっている建築構造の専門家・仲盛昭二氏に、緊急電話取材を行った。

(聞き手:伊藤 鉄三郎)

共同不法行為として連帯責任へ

 ――仲盛さんは、今回の裁判の判決を、どのように予想されますか。

 仲盛 まず、私は法律の専門家ではありません。一建築構造の技術者の知識と経験の範囲内で、私なりの見解を述べることをご理解ください。この裁判は、建築物の欠陥の損害賠償を求めたものですが、建築物を建設するという行為は、設計、施工、施工管理という共同行為です。このマンションの瑕疵について、資料を見る限りでは、設計の瑕疵に、施工の瑕疵が複合的に重なり、どちらの瑕疵も建物の強度を著しく低下させる瑕疵なので、おそらく、「共同不法行為」として、被告三者に、連帯して賠償金の支払いを命じる判決になるのではないかと、個人的には思っています。

 ――建築裁判における共同不法行為とはどういうものですか。

新生マンション花畑西

 仲盛 共同不法行為とは、複数の者が関与して、権利を侵害する行為のことを言います。
このマンションにおいては、設計の偽装などが原因で、耐震強度が35%となっていること、施工においては、手抜き工事により、「建物全体にわたり、法令で定めた鉄筋のかぶり厚さが確保されていない」ほか、「図面に明記されている梁が30カ所も施工されていない」「コンクリート内部に木片などの異物が混入されている」などの瑕疵が、客観的に明らかになっており、施工の瑕疵だけでも、法令違反で危険な状態となっています。
 判決が共同不法行為で損害賠償を命じる場合、被告らに連帯して損害賠償額を支払えと言い渡します。損害賠償額のうち各加害者がそれぞれどれだけの割合を負担すべきかについて判決が言及する場合もありますが、今回の場合では、被告三者のうち、経営的に零細な設計事務所と、スーパーゼネコンである鹿島建設では、資本力に雲泥の差があります。これらの実状を勘案し、施工の瑕疵の割合を明確に分けることが、難しく、紛争の解決にとっても適切ではないので、判決が負担割合に言及するとは思いません。

問題を見過ごした建築確認審査

 ――設計上の問題が、なぜ、建築確認審査の過程で是正されなかったのでしょうか。

仲盛 昭二 氏

 仲盛 この事件に関する資料を見ると、構造計算の偽装は、非常に単純な偽装でした。主なものは、「地盤種別を偽装し地震による揺れを小さく仮定し小さな部材でも成り立つよう設計する」「保有水平耐力計算(二次設計:震度6強程度を想定)における重要な係数である構造特性係数を偽装し法令規準に反した構造計算を行った」などです。
 また、構造計算書には「入力データリスト」が添付されておらず、図面と構造計算書の整合性を確認できない状態でした。これらは、建築確認審査の際に、担当した久留米市の職員が容易に気付くことができるものであり、これに気付かないようであれば、久留米市の審査能力はゼロだと断言できます。
 建築確認において、構造計算の偽装を指摘し是正を指導していれば、少なくとも、設計に起因する不具合は回避できたと思います。上記に挙げた「保有水平耐力計算における重要な係数である構造特性係数の偽装」は、東京の豊洲市場の建物においても、同様の偽装が発覚しており、私を含む、構造の専門家が指摘していますので、今後、東京都や設計を担当した日建設計が、どのような対応を示すのか、注目されています。

 ――仮に、建築確認において、正しい設計内容に是正されていれば問題はなかったのでしょうか。

 仲盛 設計が是正され、法令規準に適合した状態で建築確認済証が交付され、建築確認通りに施工が行われていれば、何も問題はなかったと思います、しかし、施工において、鹿島建設が、とんでもない施工ミスを犯したことは先に述べたとおりです。
 「図面に明記された梁を30カ所も施工しなかった」とは、一般常識的に、あり得ないことです。この梁は、単独では不安定な構造である外部階段とマンション本体を繋ぐ重要な役割を担うものです。このような重要な梁を施工しないという変更を行うためには、設計者が、「梁を除いても安全」であることを工学的に確認し、正しい手続きにより設計変更を行わなければなりません。しかし、このマンションでは、そのような手続きは行われておらず、単なる「手抜き工事」に過ぎなかったのです。日本を代表するスーパーゼネコンである鹿島建設は、このようなお粗末な手抜き工事をした挙句、裁判においては、開き直っていたのです。実に嘆かわしいと思います。

(つづく)
【聞き手・文:伊藤 鉄三郎】

 
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